高齢化社会における介護問題を主題にしたお話です。

介護事業に対する国のシステムや介護に対する社会のあり方が、
サービスを受ける余裕のない当事者たちを追い詰める介護の闇。

「絆」と簡単に言うけれど、
もともと「絆」というのは束縛、呪縛、人の自由を縛るものという意味だった。
それを人と人とのつながりといういい意味にとらえて、家族が介護をすることを美しいこと、当たり前のこととする風潮は、当事者たちにとっては「呪い」でもある。

人が人を殺すことは、もちろん法にも倫理にも反する。
でも、犯人は正しいことをしたと思っている。
安全地帯から「それは悪だ!」と叫んだところで、地獄にいる人にとっては説得力がない。
 
善とは何か。
悪とは何か。
人の守られるべき尊厳とは何か。
尊厳を守ることとは何か。

そんなことを深く考えさせられるお話でした。
あまり詳しく書けないことがもどかしいけど、
前に読んだ久坂部洋さんの「廃用身」を思い出しました。

私は普段から、
ひとつの事実に対して、それに関係する人の数だけ真実があると思ってますが、
こういう問題を考えると特に感じますね。