初めて読む作家さんです。
主人公の飛鳥は、幼い頃に実の親に捨てられ、孤児院で育っていた。
孤児院では仲間や優しい先生と一緒に、それなりに幸せに暮らしていた飛鳥の人生は、
お金持ちの本岡家に引き取られたことで一変する。
孤児たちには、行きたいか行きたくないかを選ぶことも、帰りたいと言うことも許されないのだ。
もちろん、中には引き取られた家で幸せに暮らす孤児もいるだろうが、
飛鳥の場合はまったく違っていた。
本岡家は本当に子供がほしくて飛鳥を引き取ったわけではなく、
学校に行かせて生活をさせてやる代わりに、お手伝いさんとしてタダで働かせるためだったのだ。
そして飛鳥への態度は、ほぼいじめのように酷いもので、特に同じ学年の娘のワガママは大変なものだった。
それでも歯を食いしばって耐える飛鳥だったが、その様子がまた本岡家の面々は気に食わず、さらに酷い仕打ちをするのだった。
ある日、飛鳥は本岡家での生活に耐えかねて家を飛び出してしまう。
孤児院にいた頃に、遠足で皆とはぐれた自分を助けてくれた青年と会えるのではないかと、
小さな小さな、奇跡に近い願望を抱きながら公園のベンチに座っていた飛鳥が見たのは、なんと、かの青年だった。
勇気を出して声を掛けたものの、当然、青年は家に帰るよう諭す。
しかし飛鳥はガンとして首を縦に振らず、根負けした青年は「今晩だけ」と言って家に連れて帰る。
飛鳥はその青年・祐也に今までのことを洗いざらい話し、どれだけ本岡家が酷いことをするかを話す。
どうしても帰りたくないという飛鳥に、最初はそれでも帰るようなだめる祐也。
しかし本岡家の人間と直接話をした後、祐也は飛鳥を引き取ることを決意する。
祐也の部屋に入り浸る親友・史郎、お手伝いさんのトキ、管理人さん、同じマンションに住む祐也や史郎の同僚・厚子に囲まれ、
学校では親友と呼ぶべき順子とも出会い、
飛鳥の心は、行ったり来たりしながらも、徐々に溶けていく。
そんな飛鳥の生活を、また本岡家が狂わせることになる。
本岡家の長女が同じマンションに引っ越してきたのだ。
飛鳥たちが住むマンションは祐也の会社の社宅として使われており、
本岡家の父親がその会社の上層部だったので、長女も入社したということだった。
長女の存在で少しずつギクシャクした空気が流れる中、長女の毒殺事件が起きる。
というお話です。
「殺人事件が起きた」ってことで終わってるからサスペンスか推理もんかと思うかもやけど、
そうではなくて、ひとりの少女の10数年に渡る物語です。
辛いことがあって、色んな人の暖かさを知って、少しずつ心を開いて、人を想うようになって、
悩んで、戸惑って、遠慮して、言いすぎて、泣いて、喜んで……
そういう年月を重ねて、本当の意味で、自分の足で歩こうとする物語です。
祐也と史郎のコンビは素敵だし、厚子も素敵。
飛鳥にはちょっとイライラさせられる時もあるけど、あんなことがあったんだから、そんな風に警戒してもしょうがないよなと思ったり。
最後には飛鳥が自分で幸せを掴みとったので、ほっとしました。
あまり抑揚がなく、たまに読むのがしんどくもなるんだけど、
なんだか自分も飛鳥の成長に付き合っているような感覚になるお話でした。

