ついに、ロシアがウクライナに軍事侵略を開始してしまいました。ウクライナを3方向から攻囲するロシア軍の侵攻は、じつに第二次世界大戦以来、世界が目にしたことのない大規模なものです。SNSで世界に拡散された、ちょうど80年前の1942年のロンドンの地下防空壕で人々が肩を寄せ合う写真と、今のキエフの地下シェルターで呆然とする人々の写真が、ヒトラーと重なるプーチン大統領の狂気を象徴しています。

 

 

 このような「力による一方的な現状変更」が国連憲章違反であることはもちろん、私たちは、冷戦後の国際秩序をあからさまに破壊する行為を容認することはできません。しかし、米国をはじめ西側諸国による経済制裁(の脅し)は、侵略者の行動を抑止することができませんでした。軍事力でロシアの1/10の規模のウクライナは、開戦からわずか数時間で防空システムをほぼすべて失い、ロシア軍地上部隊の侵攻を許してしまいました。

 

 そして、特筆すべきは、中国外相がロシアの行動を支持したことです。昨年11月以来、今回のウクライナにおける「ハイブリッド戦」(軍事・非軍事の複合戦争)の様相を静かに見つめていた中国が、ついに「支持」を表明したことの意味は、日本にとり重大です。

 

 北京政府は、わが国固有の領土である沖縄県尖閣諸島を自国領土と強弁し、執拗にわが国の実効支配を突き崩そうとし、沖縄・琉球地域の帰属にまで疑義を呈し、かつ、2300万人の国民を擁し、世界の半導体製造の8割を担う自由と民主主義の国「台湾」を武力で併合する姿勢を日に日に強め、軍事的圧力を激化させているのです。

 

 まだ始まったばかりのウクライナ戦争ですが、私たちに少なくとも次の三つのことを教訓として突きつけていると思います。

 

1.力を信奉する相手には、力以外の者は説得力を持たない。

2.いかなる経済制裁も侵略者の行動を抑止することはできない。

3.抑止が崩れた事態に的確に対処できない抑止力は張子の虎に過ぎない。

 

 今回のロシアによるウクライナ侵略は、戦後長きにわたって享受してきた「泰平の眠り」から私たちを目覚めさせることになったと思います。今年は、我が国の安全保障に関する重大な政策文書(『国家安全保障戦略』と『防衛計画の大綱』)を約10年ぶりに改定する大事な年です。私も、政府与党の一員として、今回の教訓を胸に刻み、「自分の国を守るのは自分たちしかいない」という冷厳な国際社会の現実を見据えて、確固とした国防体制を構築するべく全力を傾けてまいります。