五島達は相談した。

太宰府天満宮の巫女達が北野天満宮に飛梅の苗木を奉納する間にこの天満宮の何処かに記された封呪を解くことにした。
先ず、五島達は境内の捜索から始めた。
境内を散策していたら、いろんな霊達がミデイに呼び掛けてきた。
ミデイは無視して五島達について行った。
一人の少女の霊がミデイを手招きした。

「貴女はどうしたの?」

と気になり、その霊に呼び掛けた。

『私がここを建てる様に頼んだの。』

「どうして?」

『怖いおじさんが暴れて、多くの偉い人を殺したり、天変地異を起こしたりしていたから。』

「その怖いおじさんは誰?」

『ス・ガ・ワ・ラ・ミ・チ・ザ・ネ』

「誰がここを建てたの?」

『フ・ジ・ワ・ラ・モ・ロ・ス・ケ』

「藤原師輔とは道真公を陥れた藤原時平の甥と言われています。」

と森田研究員が注釈した。

「貴女の名前は?」

『わたしは文子(あやこ)。』

「多治比文子(たじひのあやこ)さんですね?」

と森田研究員が訊ねた。

『そうです。
お兄さん、私を知っているのですか?』

「はい、ここに天神様のお社を建てる様に言った少女でしょう?」

『そう、後で太郎丸にも言わせたけど!』

「あやこちゃん、それでは、陰陽師が天神様を封じた場所を知っていますか?」

『あれは、天神様の怒りが乗り移った土蜘蛛を封じたのです!』

「土蜘蛛の霊が暴れていたの?」

『そう、天民武盛で虐げられた原住民達の霊なの。』

「そうだったの。
その場所は何処?」

『東の観音寺。』

「有難う!
貴女はもう直ぐ神化人霊になれる様ですね!」

『そう、貴女達にこのことを伝えるまでが私のお役なの。
もう良いかしら?』

「有難う。
助かったわ!」

五島達は北野天満宮の境内の入口近くにある真言宗泉涌派の東向観音寺に向かった。
観音寺に行くと5歳位の男の子が遊んでいた。
ミデイ達に話掛けてきた。

「何をしに来たの?」

「封呪を解きに来たの?
貴方は誰?
その着物の紋は貴方の紋章?」

「うん、僕の師匠がくれたの!」

「あっ、ダビデの紋章、六芒星だ!」

「ええ、魂物完全分離の呪印です。」

「貴方の名前は何と言うの?」

「僕は晴明。
安部晴明(あべのせいめい)。」

「師匠とは賀茂忠行(かものただゆき)のことなのか?」

「そう。
先生を知っているの?」

「忠行先生はここで何をしたのか知っているかい?」

「うん、土蜘蛛を封呪したの!」

「どんな方法で封呪したか知っているかな?」

「うん、六人の武士に頼んで、六ヶ所に刀を刺して、中に置いた、土蜘蛛塚に印を切って封呪したの!
その後、僕にこの六芒盛星をくれて、家紋にして護る様に言われたの!
でもこの家紋は一筆では書きにくいの。」

「ミデイ君、それだ!」

「晴明ちゃん、お願いがあるの、お姉さんの頼みを利いてくれる?」

「なあーに?」

「貴方が何時もここで家紋を書いているのでしょう?」

「そう、先生から言われて書いているの。
でも一筆で書くのは時間がかかるの!」

「実はその印は違うのよ!」

「何で?
師匠はこう教えてくれたよ!」

「師匠が間違えて教えたのよ。
六芒星では地面に書くのに面倒でしょう?
本当は五芒星が正解なのよ!
ほら、やってみてごらん。
私の真似をして!」


とミデイは一筆書きに五芒星の印を書いて見せた。
真似をして晴明が書いた。

「わあっ!
このほうが簡単で良いみたい!」

「そうよ!
そのほうが印がよく利くのよ!
これからそう印を切るようにしたが良いと思うわ!」

「うん、わかった。
でも家紋はどうしよう?」

「家紋も変えると良いと思うわ!」

「そうだね!
そうしよう。」

「明日、ここで私達が御祭をしたいと思うの!
その時はここから出ていてくれない?」

「どうして?」

「神様達が沢山みえるのよ!
貴方も祭に参加しますか?」

「わかった。
僕、神様は苦手だから、何処かに遊びに行くよ。」

これで準備は出来た。
明日、北野天満宮の拝殿で飛梅の苗木の奉納式典が行われる時に、五島達はここにきて、封呪を解消する計画をしたのでした。

                                                                             (つづく)