咲良は車に乗ると直ぐに携帯で電話した。


「ママ。今から帰るから、一つ、お願いがあるの。」

「あら、もう、帰って来るの?
何ですか?  頼みとは?」

「あのね!
お祖母さんの可愛がっていたお牛さんの銅像を探して、お宮の前に飾って置いてくれない!」

「まあ、どうしてあんな古い牛の銅像なんかどうするのよ!」

「帰ってから説明するけど、とにかくお願いね!」

1時間少しで咲良の自宅に到着した。

「それじゃ、僕は今日はこれで失礼するから。」

「駄目よ!   純一さん、家に上がって下さい。」

「だって・・・・。」

「いいから、上がってちょうだい。」

咲良は純一の手を引いて玄関の戸を開けた。

「ただいま!」

「お邪魔します。」

「お帰り。
早かったな。」

と幸一が迎えた。  

「パパ、ママは?」

「うん、物置で何か探しているよ!
何を探す様に頼んだのだ?」

「お祖母さんのお牛さんの銅像。」

「なんだ。
それなら、外の物置では無くて、仏間の下の箱の中にあるよ。」

「ママ~。
こっちだって!」

と咲良は多美子を呼びに行った。

幸一は純一と仏間から、その牛の銅像を引っ張ります出して来て、お宮の前に置いた。
多美子と咲良が宮の前に戻ると、直ぐに通信が来た。

『早くそのお牛像を掃除してくれ。
宮前の御神塩をいれた水で拭いてくれ。』

「分かりました。
少し待って下さい。」

多美子は新しい布巾を出して来て、洗面器に水を入れて持って来た。
咲良が守護之宮に供えていた神塩を少しその水に混ぜて、布巾で牛の像を綺麗に拭きあげた。

   五味家の牛の銅像

『それでよし。
咲良殿、早く純一殿の肩からお牛像にわしを移してくれぬか?』

「はい、ただいま。」

と、咲良が純一の左肩に両手を広げて、何かを受け取り、そのままお牛像の上に移す動作をした。
そして二礼三拍手一礼した。

幸一がその様子を見ていて、咲良に訊いた。

「どなたを連れて来たんだい?」

その時通信が入った。

『我は耕大陣之大神と申す。
暫くの間、このお牛の銅像を陣場と致す故よろしく頼む。
純一殿、そなたの肩は心地良かったぞ。
お礼申す。』

「咲良、上に訊いておくれ。
この神様はどんな神様なのか?」

「『私の長男神だ。
天の伝達司のお役をしておる。』

と末代日乃王天之大神様が言われているいます。」

「『今度、小豆島に行く時には、このお牛を連れて行って下されよ!』

とのことです。」

「どうして、純一君の肩に載られて来たのですか?」

「あっ、純一さんのミタマ親神様が耕大陣之大神様だということを、私言わ無かったかしら?」

「僕のミタマ親神様なんだ!」

「そうなの!

『小豆島に一緒に行こうぞ!』

と言われてますよ。」

「うわー、神様に上手く使われたのだな!
展覧会は付け足しだったんだ!
本命は耕大陣之大神様を、ここに案内することが主だったんだ。
初めからそう言えば良いのに!」

「『秘めに秘めた伝達司だから、用心に用心を重ねたことだった。』

と言われていますよ。
神界には神界の問題があるんですね!」

「それじゃ、12月はまた4人で小豆島神業だね!」

と幸一が言った。

                                                                             (つづく)