イノダコーヒー三条店――記憶の中のカウンターに、再会する午後 | 大阪の弁護士•長野智子(智聖法律事務所)

イノダコーヒー三条店――記憶の中のカウンターに、再会する午後






イノダコーヒー三条店。

大きなカウンターが印象的な店です。


かつてここを訪れた記憶があります。

司法試験受験のため京都に下宿していた頃、生活は質素そのもの。自炊で食費を切り詰め、その分を「息抜きのコーヒータイム」に回していました。外食は贅沢でも、コーヒー一杯だけは、自分に許していた小さな自由でした。


久しぶりに京都を歩き、ふと「イノダコーヒー」という名前が頭に浮かび、本店に足を運びました。しかし、どこか違う。雰囲気は確かにイノダなのに、記憶の中の風景と噛み合わないのです。


そこで三条店へ回ってみました。

扉を開けた瞬間、はっとしました。


――これだ。


記憶していた、あの大きなカウンター。

席の配置、空間の奥行き、コーヒーの香り。時間を越えて、当時の自分と視線が重なったような感覚になりました。


せっかくなので、昼食をいただくことにします。

選んだのは、三条店限定メニューのオムレツが乗ったナポリタン。


当時は存在しなかったメニューです。

ケチャップの甘酸っぱさと、ふんわりとしたオムレツのやさしさ。受験生だったあの頃には、きっと手を伸ばさなかった一皿を、今の自分は自然に受け止めていました。


節約と緊張の毎日を送っていた若い自分。

その同じ場所で、落ち着いて昼食を楽しむ現在の自分。


イノダコーヒー三条店のカウンターは、

ただコーヒーを飲む場所ではなく、人生の異なる時間をそっと並べてくれる場所なのかもしれません。


記憶は曖昧でも、場所は確かにそこにあり、

再訪することで、当時の自分を静かに肯定してくれる。

そんな不思議な力を、この店は今も失わずに持っていました ☕