魂の退社 会社を辞めるということ。 [ 稲垣えみ子 ]
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稲垣さんの転機を象徴するのが、著書『魂の退社』です。
この本は、ただの「退職エッセイ」ではありません。
働き方に疲弊した人に向けた脱出マニュアルでもありません。
むしろ、
「どんな働き方を選ぶにしても、自分の魂を自分で所有しているか」
という、誰にとっても避けることのできない問いかけが軸にあります。
新聞社での仕事は刺激に満ち、社会の最前線に立つものだったものの、気づけば“責任”“立場”“権威”といった目に見えない鎧が重くのしかかっていた——。
そこで彼女は、自分の人生の主導権を取り戻すために退社を選ばれました。
退職後のシンプルな暮らしは、物を減らすことが目的ではなく、
「自分で決め、自分の体で動き、自分の時間を自分に返す」
という、主体性の回復の旅だったのです。
『もうレシピ本はいらない』——暮らしを“正解探し”から解放する
『もうレシピ本はいらない』では、料理をめぐる価値観が大きく揺さぶられます。
この本に描かれているのは、華麗な料理テクニックではなく、
「レシピ通りに作らねば」という呪縛からの自由
です。
冷蔵庫がないため買い置きができず、「今日あるものを全部使う」という極めてプリミティブな料理法に行き着いた稲垣さん。
素材の声を聞き、火加減と相談し、完成形を想像しすぎず、ただそのときの最適解を見つけていく——。
それは料理というより、
“いまを生きる稽古”
に近いものであり、読者の肩の力をそっと抜いてくれます。
「冷蔵庫なし生活」にユーモアを添えながら綴る姿は、アフロヘアと同様、どこか飄々とした軽やかさに満ちています。
重苦しくならず、むしろクスッと笑いながら、“こういう生き方もあるのだ”と胸が軽くなるのです。
アフロヘアとユーモア——生きる姿勢そのもの
稲垣さんのアフロヘアは、単なる髪型ではなく、一種の哲学のようです。
「整えすぎない」「完璧を求めない」「流れに身を任せる」。
そのスタイルは、彼女の語りや文章にもそのまま反映され、読者の心に柔らかく届きます。
ユーモアは、彼女の核心的な魅力です。
どんなに鋭い問題意識を語るときも、深刻さで押しつぶさず、光が差す方向へ導いてくれるのです。
おわりに
激動の社会の中で、自分を見失いがちな日々。
何かを「手放す」ことで、むしろ視界が開けることがある——稲垣さんの実践は、それを静かに教えてくれます。
肩の力を抜く方法、他者に振り回されない感覚、自分の人生のリズムを取り戻す技法。
そのすべてが、彼女の等身大の生き方から伝わってきます。
我々は自立した1人の人生の先輩を知ることで慰められ勇気付けられている。