Meets Regional (ミーツ リージョナル) 2024年 8月号 [雑誌]
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その昔、事務所訪問で東京のオフィスを訪れた際、採用担当の方と思いがけず話が弾みました。
その方も私と同じく、大学時代を京都で過ごされたとのこと。
「京都での学生生活って、まるで夢の中で過ごしたみたいに感じるよね」
と、ふっと遠い目をしておっしゃったのです。
ああ、わかる——と胸の内で大きく頷きました。
京都には、記憶を柔らかく曖昧にしながら、それでも深く刻みつける、不思議な魔力があります。
祇園の桜吹雪、迷宮のような宮川町や木屋町。
そんな華やかな場所には学生の頃はあまり縁がありませんでしたが、それでも、ふらふらと行き場もなく歩き回った吉田、田中のあたりの空気は、今でも心の奥に残っています。
真冬の底冷え、古い下宿の軋む床、夜の自転車の風の冷たさ——
当時はただ必死に日々をこなしていただけなのに、振り返るとどれも金色の霞がかかったように懐かしい。
時々、本当にあの頃の自分があそこに存在していたのだろうか?と不思議になるほどです。
京都で過ごした学生時代は、現実と夢の境界がどこかあいまいで、それゆえに永遠に心に残るのかもしれません。
今度、あの頃の自分がいた風景を確かめに、久しぶりに吉田や田中を歩いてみようと思います。
ガイドブックを片手に、まるで初めて訪れる街のように。
年月を経て変わったもの、そして変わらずそこに在り続けるもの。
そのどちらも、静かに味わえる旅になりそうです。