君が僕らを悪魔と呼んだ頃 講談社

作者 さの隆 

初版発行 2018年3月9日

 

『かつて、僕は悪魔だった。』

 

半年間の失踪を経て、記憶の全てを失ってしまった高校生、

斉藤悠介、記憶喪失なりに平穏だった日常は、

ある日突然破られた。

次々に現れる過去を知る者、復讐者たち。

覚えのない咎で断罪される瞬間、

死肉に突きたてた刃の幻を見た。

――さて。

俺が殺したのは、どこの誰だ?  

 

 

という文言を見て、購入を決めた作品。

 

とてもシリアスな扉絵から始まる一話ですが、

そこから数ページはザ・主人公。

 

高校の教室で友達とバカを言い合い、

彼女が教室まで迎えに来る、いわゆるリア充で、

下校の途中、彼女と(記憶の中では)初めてのキスをする。

 

バイト先の友達とも仲良さげ。

その友達の背中には大きな酷い火傷の跡があったが、

着替えのたびにその火傷をまじまじと見られ、

「いいかげん慣れろ」と言う友達。

「ソレに慣れたら、友達じゃないような気がする」と返す主人公。

 

その火傷は熱湯をかけられて出来たもの。

昨日テレビで見た熱湯風呂がまん大会は面白かった。

それに地図帳を無くしたから、ちょうどいい。

背中にかこう。

 

必死に我慢する姿を見て、腹を抱えて笑う悪魔。

 

『お前だよ、斉藤悠介』

 

掴まれましたここで。

 

悪魔すぎる主人公の前の人格。

 

過去に犯した自分の罪が公になればゲームオーバー。

 

そうならないために史上最悪な自分探しの旅が始まります。

 

こんな気の滅入る自分探し、絶対にしたくないです。

 

次々と出てくる昔の悪事は、正直滅入ります。

 

強い言葉を使えば、胸糞悪いです。

 

でも、このかつて悪魔だった男は、記憶を無くしてこの先どんな人生を送るのか。

 

バッドかハッピーか、見届けてやりたくなりました。

 

読み手を選ぶ作品ではあると思いますが、衝撃が中々強かったので、感想を書かせてもらいました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

死神坊ちゃんと黒メイド  小学館

作者 井上 小春

初版発行 2018年1月17日

 

『触れたものの命を奪ってしまう呪いをかけられた坊ちゃん

周囲から拒絶される彼に、一人仕えるメイド アリス

二人の切ない恋物語と…逆セクハラの毎日!?』

 

感想

 

美しい、の一言!

 

まずこの表紙の美しさです。

 

黒衣、満月、バラ、このタイトル、なのに純愛。そしてギャグ。

 

本屋さんでこの本を見付けた時、一緒に帯付きのものも並べられていたのですが、

帯付きだと帯が外せない性分の私は、あえて帯なしを手に取りました。

 

だって美しかったから。

 

よんでみるとこの二人の心がまあ美しい。

 

幼い時に魔女から呪いをかけられ、触れたものの命を奪ってしまう坊ちゃんは、

母親から死神と呼ばれ、森の奥にあった旧邸に追いやられてしまいます。

 

そんなことをされたら、まあぐれますよね。私ならぐれます。

 

でもこの坊ちゃんは違います。

 

坊ちゃんは虫や動物が苦手です。

その理由は『行動が読めないから』

 

はい、美しい。

 

うっかり触って殺しちゃうかもしれないから苦手。

 

聖人ですか?

 

呪いをかけられて以来、周囲の人からは突き放され、友達はいなくなります。

 

それでも、久しぶりにかつての友人が会いに来ると知れば、

挨拶の練習を夜な夜な始める純朴ぶり。

 

そんな彼に仕えるメイドのアリス。

 

この子がまた美しい。

 

触れたら死んでしまうと知りながら、わざと顔を近づけたり

逆セクハラで煽ってみたり。

 

坊ちゃんは照れと触れてしまうのではという思いから、

慌てて制止するのですが、その反応を楽しんでいる様子。

 

ドS、メイドなのにドS。

 

好きがゆえでしょうけど、表現方法が極端です。

 

逆に坊ちゃんは好意を表現するのが難しい。

 

口で伝えることは出来るけど、手は握れないし、

プレゼントを贈ろうにも、手にした花は枯れてしまう。

 

家族、友人から拒絶され、死神だ化け物だと言われ、

好きな相手に触れることさえ出来ない坊ちゃんにアリスは、

枯れたバラを受け取りながら一言いいます。

 

『枯れた白い薔薇の花言葉は、「生涯を誓う」ですよ』

 

なんて美しいのだろうか……。

 

そんな、ちょいギャグ ちょいエロ ちょい純愛な

「死神坊ちゃんと黒メイド」

とても楽しませてもらいました!

 

 

 

 

 

 

ここは今から倫理です。 集英社

作者 雨瀬シオリ

 

あらすじ

「倫理」とは人倫の道であり、道徳の規範となる原理。

学ばずとも将来、困る事はない学問。

しかし、この授業には人生の真実が詰まっている。

クールな倫理教師・高柳が生徒たちの抱える問題と

独自のスタンスで向かい合うーーーー。

新時代、教師物語!!

 

感想

 

倫理という授業は学生当時無かったのですが、こんな先生がいたら、

迷わず授業を取っていたでしょうね。

 

生徒の自死や性、周りと違う価値観などの悩みを、倫理教師らしく解決していくお話しです。

 

一話完結で読みやすく、読後感はとてもいいです。

またクールで一見完璧そうな主人公ですが、毎回どこか抜けた発言もしていて、好感が持てますし、人間味を感じさせます。

とても魅力的な主人公だと思いました(^^)

 

どんな人でも大なり小なり悩みを抱えたことがあると思いますが、

その気持ちのどこかに引っかかる内容が一つはあると思います。

 

この一冊の中で、何度も共感し、納得しました。

 

舞台は高校ですが、誰しも共感しえる作品だと思うので、大人の方にもおすすめしたい漫画です。

 

 

 

ここからはネタバレを含みます

 

 

 

どの話も素晴らしいのですが、一話で完全に心を掴まれました。

お話しの流れ自体はよくあるものですが、現代社会らしく

加害者生徒には手を上げれば体罰となり、被害者生徒にも触れればセクハラとなる。

切迫した状況下においても教師という職に準ずる行動を徹底する場面は普通のそれらよりもリアリティがありました。

 

そんな中でも、作中の言葉を使えば、倫理で心に触れることで慰め、癒す姿

また、その後のシーンの「あれはオフレコで」という茶目っ気ある姿に完全に掴まれました(^^)

 

そのほかにも

「それがどんな理由でも、命に換わる程重い絶望になるんです」 ♯2くだらない人間

「私の話しも信じなくていいですからね」♯4よく生きる

「自由はないが、不安もない」♯5学校は眠い

など好きな言葉がたくさんあります。

合わせて好きなシーンもたくさんあります。

 

最後に、巻末に描かれた作者自身が経験されたお話しはとても考えさせられました。

 

なんども読み返したい作品だと思いました(^^)

 

 

 

 

 

 

 

タイトル通り、私の好きな物を紹介したいと思います。

 

今回は映画版、バトル・ロワイアルの紹介です。

 

私は現在20代なのですが、同世代から上の世代だと多くの方がご存知のものかと思います。

 

内容は中学3年生の1クラスが最後の一人になるまで殺し合うというもので、当時はその内容から多くのメディアで取り上げられていました。

 

公開された映画はR15指定で、15歳未満は見ることが出来ませんでした。

 

当時私は小学生で見ることが出来なかったのですが、その内容が気になりすぎて、映画を見た兄に事細かに内容を聞いた事を覚えています。

 

ちなみに小説版も好きで、小学校の夏休みの宿題で出た読書感想文はこれについて書いた記憶があります(^^)

 

初めて見た時の感想はうまく思い出せませんが、とてつもない衝撃を受けたことは覚えています。

 

これまでに何度かこの映画を見てきて、最初はすごいや悲しいといった感情だったのが、歳を重ねるにつれ、彼らの葛藤や思いを理解できるようになり、何度見ても飽きない作品だと思っています。

 

沢山人が死に、過激な描写も多いので苦手な方や、何がいいのかわからないと思う人も多くいると思いますが、良くも悪くも何かの感情を抱かせるモノは価値があると思っています。

 

みんなで助かろうとする者、疑心暗鬼に陥り友達を殺す者、自ら望んで殺しをする者、様々な感情があり、その行動一つ一つに心を動かされます。

 

 

 

ここからはネタバレを含みます(^^)

 

 

 

この映画には多くの生徒たちが出てくるのですが、中でも好きな生徒を何名か上げたいと思います。

 

まずはやっぱり七原秋也です。

 

支給武器は鍋の蓋。

 

作中、事故を除けば殺した人間は教師のみ。(多分あってるはず(^_^;))

 

ひそかに思いを寄せていた中川典子と行動を共にしていて、二人で支給武器を確認するシーンがあるのですが、鍋の蓋と双眼鏡が出てきたときは二人と一緒に絶望しました。

 

本当に「これでどうやって戦えっていうんだよ」です。

 

途中何度か危ない場面があるのですが、そのたびに助けられ難を逃れていきます。

 

今でも演じていた藤原達也さんの叫ぶ演技を見ると「どうしてみんな簡単に殺し合うんだよ」が脳内再生されるほど印象に残っています。

 

次に川田 章吾。

 

転校生として参加するのですが、実は以前のこのプログラムの優勝者で、どちらかというと意欲的な生徒です。

 

支給品を受け取る際、前の生徒が受け取りを拒否したため、その生徒の物を渡され、途中で戻り支給品を取り換えるほど。

 

ですが結局殺したのは、元渕と殺人マシーン桐山和雄だけだったはず。

 

支給武器はSPAS12というショットガンで腰で構えて撃つのがカッコいいです。

 

支給品交換してよかったですね。経験者だしもしかしたら「あれ?コレ軽すぎだな。絶対銃器じゃないな。変えてこよう」と思ったのかも(^^)

 

ちなみに元渕を殺した際に奪ったM19はその後七原に渡され、バトル・ロワイアル2にも引き継がれました。

 

お父さんが多い生徒です(笑)

 

三人目は作中もっとも殺した、殺人マシーン桐山和雄。

 

支給武器はハリセン。

 

こちらも転校生ですぐに不良グループにつかまり、その武器(?)を笑われますが、もみ合いの中でウージーというサブマシンガンを手に入れます。

 

これが桐山の相棒となり、この先多くの命を奪っていきます。

 

殺した人間は多すぎて書きません(^_^;)

 

マシンガン、ハンドガン、手りゅう弾に日本刀とあらゆる武器を使う、まさに殺人マシーンです。

 

作中一言も喋らないキャラクターで、転校生ということもあり一人だけ黒の学ランを着ていて、悪のイメージが強いです。

 

銃を構えて撃つ事は無く、半ば投げ出しながら撃つのが印象的で、プログラムを楽しんでいるという感じです。

 

最期は川田と撃ち合い殺されるのですが、その前に爆弾により視力を失っているにも関わらず、音のした方に乱射する様は、もう動物です。野獣です。中学生ではありません。

 

その爆弾を作った張本人、三村 信史は一番カッコいいと思う生徒です。

 

瀬戸、飯島の三人でプログラムをぶち壊す為に爆弾を作り始めます。

 

支給武器はベレッタM92F。

 

作中殺した人間はいません。

 

叔父さんが反社会的組織にいて、腹腹時計という爆弾の設計図を持っていました。

 

パソコンを使い、本部のシステムをハッキングするなど、クールなキャラクターです。

 

そもそもこのプログラムは、ダメな子どもたちを殺し合わせて価値のある大人にするのが目的なのですが、ここまでの知識と技量は十分価値のある人間だと思います(^_^;)

 

彼もまた中学生離れした生徒の一人ですね。

 

最後に女子生徒版殺人マシーン、相馬光子。

 

支給武器は鎌。

 

彼女は鎌とスタンガンと清水から奪ったM1911ガバメントの三つを使い量産していく。

 

武器は桐山に比べると心もとないが、不意打ち色仕掛け等を使い、女子生徒版殺人マシーンへと至る。

 

桐山と違い、奪われる側では無く奪う側へとまわっただけで、殺しを楽しんでいる訳では無い。

 

最後は桐山と交戦し、持てる武器を使い闘うが、最後は撃ち殺されてしまう。

 

撃たれても撃たれても何度も立ち上がるシーンでは、BGMに「G線上のアリア」が使われ、そのギャップがとても印象的です。

 

とまあここまで長々と書いてきましたが、それほどに私はこの作品がとても印象的で好きだということが伝わればと思います(多分ここまで読んでくれる人いないだろうな)(^_^;)

 

この映画をきっかけに、登場した銃のエアソフトガンなどを集めているのですが、気が向いたらまた紹介します(^^)

 

この作品、生徒たちと歳が近いほど受け取るものが大きいと思いますので、15歳以上の方はよかったら見てみてください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あなたのための誘拐 祥伝社

作者 知念実希人

 

 

あらすじ

女子中学生を誘拐した謎の犯罪者<ゲームマスター>が課した【ゲーム】に失敗、被害者を死なせてしまったことで、警視庁特殊班(SIT)の刑事、上原真悟は職も家族も失った。

 

それから四年、再びゲームマスターを名乗る誘拐犯が現れる。

 

被害者は女子高生、身代金は五千万、警察への通報も指示されたという。そして要求はもう一つ、交渉役は上原真悟にすること。

 

「ずっと君とまたゲームがしたかったんだよ」とうそぶく犯人に、真悟は失いかけていた刑事魂を燃えたぎらせるが……

 

 

感想~ネタバレなし~

 

平積みされていたこの本の表紙を見て思わず手に取りました。

作者名をみると、以前読んで面白かった小説と同じ作者だったのでそのまま購入。

 

主人公は自分の力不足で被害者を死なせてしまい、辞職した元刑事の男。

 

男は刑事を辞めてからも刑事魂は失わず、犯人の捜査を独自に進めていたが、その目標を失った時、彼は刑事魂だけでなく、人として何か大事なものも同時に失ってしまった。

 

そんなある日、再びゲームマスターが現れ、生きる意味を見出すことになる。

 

この小説、警察物が好きな人にはお勧めです。

かなり詳しく警察の内部の事が書かれているように感じました。

 

特に誘拐事件の捜査に関してとても詳細に書かれていて、臨場感や緊迫感が伝わってきて、中々読む手が止められませんでした(^^)

 

この作品は大きく二つの章に分かれており、事件編と捜査編といった感じでしょうか。

事件編は誘拐犯ゲームマスターとの頭脳戦にハラハラさせられます。

捜査編は、あらゆる登場人物が怪しく感じ、いったい誰が犯人なんだとそわそわしながら読み進めていきました。

 

ページ数もなかなかあり、読みごたえはあると思いますが、長いとは感じませんでした(^^)

 

 

 

 

ここから先はネタバレありです。

 

 

 

 

まず、最後の犯人は私は予想してない人物で驚かされました。

ここ最近読んだ小説の中では一番主人公と歳が離れていたためか、中々感情移入が難しかったですが、それでも楽しめました。(^^)

 

最後犯人は捕まらず、結末をぼやかされましたが、私個人の想像では癌で死ぬまでに優衣に辿り着く、あるいは辿り着かなくても死ぬ間際に優衣が会いに来て、二人は面と向かって話をしたのではないかと思いました。

 

優衣は、死ぬ間際まで自分の事を考えて最期を迎えてほしいと思っているだろうし、真悟も優衣を見つけ出すことが残りの人生すべてを投げうるに値すると思っていると感じたからです。

 

その後優衣はどうするのでしょうかね。

最期を見届けて後を追うのか、はたまた自首するのか。

もしかしたら真悟に殺されることを願うかもしれませんが、真悟は出来ないでしょうね。

父親譲りの執念と一途な思いから、その後普通の生活に戻ることは考えられませんしね(^^)

 

『あなたのための誘拐』私のヒーローだった父親の、輝いていた姿をもう一度見たいという純粋な思いから起こした模倣誘拐事件。事件の緊迫感と犯人に近づいていく時のハラハラ感、最後までとても楽しめました。(^^)

 

同作者の小説感想です↓

優しい死神の飼い方 感想