君の名は。 | 名越稔洋オフィシャルブログ「とりあえず乾杯デショ。」by Ameba

君の名は。

今さらですが、みなさんはご覧に

なりましたか?「君の名は。」



大ヒット作なだけに支持とアンチ

の意見が大いに入り乱れてるよう

ですが、それこそはヒット作の証

ですからね。



最近「名越はどう思ったか?」

聞かれることがとても多いです。

というわけで俺の感想です。



傑作だと思います。



嫉妬するくらいの傑作でした。



設定、脚本、演出、いずれも文句

無しです。

なんと例えればいいんだろう。



映画やドラマの基本的な流れとは

フリがありオチがあり、その単位

を繰り返しながらラストを迎える

ものですが、この作品で一番感心

したのはフリからオチまでの途中

つまりフリからオチに向かう間も

常に独特な空気に満ち溢れていて

結果、ダレることなく感情を大い

に揺さぶってくれる作品に仕上が

っているところ。



また構成自体とてもレベルの高い

設計が成されています。

でもいわゆるハリウッド映画的な

パズルのピースの埋め方とは違う

設計感覚であって、それはまさに

日本人的な情緒的な感覚です。



観ている途中でつじつま合わせの

脳内作業を問われる場面もきっと

あるはずですが、その作業のため

に、観る側を置いてきぼりにさせ

ません。

ラストまできっちりと惹き付けて

くれます。



ちなみに映画の場合「つじつま」

が合う、合わない、ということを

作品の評価の大きな基準にする人

が多いのは現実です、

また君の名は。をイマイチだった

と評した人の多くに理由を聞くと

「つじつま」という言葉が出ます。

たぶん、それらの感想を持つ人の

多くはハリウッド的な展開や構成

が好きだからだと思います。



先ほど、ハリウッド的なパズルの

ピースの埋め方。という言い回し

をしました。それは言い換えれば

「フリ」「オチ」ひとつずつをパズル

のピースのひとつずつに例えた時

映画を観終えた際には、それらの

ピースの全てが、隙間なく綺麗に

埋まりきっている様子を指す例え

です。



作品によってはパズルのピースの

大きさの単位、また埋める順序の

違いはありますがハリウッド作品

の多くはキチンと隙間なく埋める

ことを大前提に作られています。

だからこそ観やすくもあり納得感

や説得力が高いわけです。



ハリウッド的なつじつま合わせの

良い例として少し昔の作品ですが

バック・トゥ・ザ・フューチャー

なんかは分かりやすいです。



SFでありながら作中で起きた事象

は必ず何らかの事象のためのもの

にすべからくひもづいてます。

パート1からパート3までそれら

のフリとオチの関連性には一切の

ブレはありません。

むしろ、数学的で緻密な印象さえ

する丁寧な作りです。

とはいえエンターテイメント作品

として充分すぎるほど楽しめます

からね。

しかも子供から大人まで。

ヨーロッパの文芸系の映画なんか

で描写は緻密でもパズルのピース

はキチンと埋めず、むしろ観る側

に対して自由に考えさせる余地を

残すために、あえて埋めていない

作品もよく見かけます。

それで成功している作品もありま

すが、作り手が観る側にピースを

埋めてくれないことに不満や消化

不良を感じる人も多いです。



つまりパズルのピースのあり方や

埋め方はマスに受けるかどうかの

基準としては大切だといえます。



しかし「君の名は。」の興収とは、

マスに受けた作品だからこそ残せ

た数字であり、結果です。

でもピースの埋め方としてはマス

に受けるハリウッド的な方法のみ

を追求していません。



そこがすごいなと思いました。



要するに「君の名は。」の魅力とは

マスに受ける、つじつま合わせの

追求でもなく、媚びに行ったネタ

でもなく、そういうこととは関係

の無い部分に皆やられたといえる

でしょう。



俺自身本当に勉強になりました。



まあ、色々言いましたがとにかく

素晴らしい。の一言。



ちなみにラストまでに4~5回は

泣きました。しかも号泣。



ご覧で無い方は是非。

よくわからなかった、という方も

是非もう一度。