ここ数年、主に東京のオーケストラでショスタコーヴィチの第5番以外の交響曲も取り上げられ、素晴らしい演奏が続いていたからこそ実現したのかもしれないボストン交響楽団によるショスタコーヴィチが演奏される来日公演。私にとっては、世界的なオケでショスタコーヴィチの交響曲第11番「1905年」を聴いてみたい、そんな20数年の夢が叶った瞬間でした。

 

前半のギル・シャハムをソリストに迎えたチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲は、ソロが入る前を加速して煽ったり、逆に歌心溢れる旋律ではテンポを煽ってじっくりと歌い込んだりと、テンポの振幅が大きく、単なる伴奏にとどまらない積極的な演奏でした。ソロは硬さが見られ、ミスも散見し必ずしも素晴らしかったとは言い難い演奏でしたが、オケの自在な表現と弦やフルート、クラリネット等の音色の美しさは惚れ惚れとするものがあり、聴き進むにつれて後半のショスタコーヴィチへの期待が高まっていきました。

 

そして後半の「1905年」。期待以上の素晴らしい演奏でした第1楽章のパイプオルガンを思わせるような美しい弦のハーモニーから離れずプレッシャーを与えるかのように叩かれるティンパニ、第3楽章の印象的な革命歌の背後にある不気味な低弦の刻み、そして、ラスト前に現れる切実に何かを訴えるようなイングリッシュ・ホルンにまるで死神のように冷たく寄り添う弦…。この曲の骨格とも言える、美しさとその背中合わせにある恐怖がよく表現されていました。

その骨格がしっかりしているからこそ、ここぞという時に徹底的に追い込み、そして容赦なく爆発するコントラストが活きてきます。第2楽章の行進から銃撃までの部分は、聴いていて戦慄が走りましたし、第4楽章の低弦の弓がバチバチと鳴るほど激しく刻まれるリズムの上で情熱的に演奏された「ワルシャワの革命歌」は、聴いているこちらも感情が昂ってくるものがありました。

 

世界的なオーケストラがこのドラマティックな曲を演奏するとここまで凄まじいのか、と終止圧倒されてしまった今日の演奏。特に、脈々と歌い継がれていく革命歌が徐々に熱を帯びていき、クライマックスで憧れを帯びた歌に変わっていく第3楽章は、奏でられる音楽だけに没入することができたくらい曲に引き込まれていました。そして、絶望的な打撃から立ち上がり、まるで飛び交う銃弾をものともせず立ち向かっていくラストは感動的で、拍手がなければしばらく放心状態になっていたと思います。もしかすると、指揮者アンドリス・ネルソンスとこのオーケストラは今世界で最も素晴らしくショスタコーヴィチを表現することのできるコンビかもしれません。

 

アンコール1曲目の「モスクワのチェリョムーシカ」からのギャロップも嬉しいサプライズで、最後までこのコンサートを楽しませてもらいました。

大切に取っておきたいプログラムです。

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