「いらっしゃいませええ!!!」薄暗い店内に入ると2人のバニーガールたちが僕たちに向かって愛想笑いをした。そしてその中のひとりがばたばたと僕たちの元に駆け寄ってきた。見れば、その子はなかなかかわいい子だった。
 
 「春菜でえす。よろしくうう」
 「あれえ...ひとりなの?」岩橋が不満そうに言った。女好きの岩橋にはこの女の子ひとりでは不満らしい。
 「え? いいじゃないですかあ...今日はお客さんがいっぱいなんだもん。女の子たちは忙しいのよ」って、その女の子が答えた。

 店内を見ると、彼女が言うほどお客はいない...っていうか僕たちしかいなかった。ほかの男たちは従業員らしい。まだ時間が早いのだろうか? 時計を見るとまだ7時だった。もうひとりのバニーガールを見ると、店の奥で気怠そうにたばこを銜えて“ぷーーーッ”って紫煙を吹き出している。

 僕たちは案内された席に座った。僕たちの担当のバニーガール春菜ちゃんは、嬉しそうに4個の小皿に入ったバタピーをお盆に乗せて来て「春菜でえす。よろしくうう...」
 「さっきも言ったよね。バッカじゃないの...」ひねくれ者の穂田が馬鹿にしたように言った。穂田は根が優しくて、しかも女の子が好きなのだが、なぜか生まれつきひねくれ者で素直になれないのがキンタマに傷だった。
 「ええ...言ったっけ?」春菜ちゃんはぷううって膨れっ面をした。
「ええ、言ってないよねえ...春菜ちゃん...」僕が気を使って言った。
 「言ってないよねえええ...」って春菜ちゃんが僕を見て、にこっと笑った。
 すると穂田が僕を見て起こった様な顔をした。穂田は僕の“調子がいい”ところを嫌っている。僕は世渡りべたで、決して要領がいい方ではないのだが...穂田の方が僕よりさらに世渡りべたで要領が悪い...???のであった。このひねくれた部分を修正すれば女の子に好かれるのになあ...って思った。

 「さあ、いいからさ、ビールを飲むんじゃないのお!!!春菜ちゃん、ビール3本になにか美味しいつまみを持って来てよ」岩橋がまだ飲んでいないのに真っ赤な顔をして言った。岩橋はカメレオンのように環境に顔色を合わせる事ができるのであった。

 ワタナベくんを見ると例によって腕組み状態のまま右手で自分の顎をおさえながら「ふんふん」と店内を観察している。僕が面白いのでワタナベくんを凝視して観察していると、それに気がついたワタナベくんが「なにか、僕がしたでしょうかあ...」って小さな声で言う。

 「いや、なんで顎を支えているのかと思ってさ...なんか名探偵みたいだから」
 「た、探偵ですか? 僕はここに入る前には探偵みたいなこともしたことがあるのですよ」ワタナベくんが言った。
 「嘘つけ!!!」岩橋が真っ赤な顔をして言った。いつの間にか春菜ちゃんがビールを持って来ていて、岩橋が待ちきれずに1杯飲み干してしまった。
 「ふええ...そうなんだ? 凄いなあ...」って僕が気をつかって言うと、また「調子がいいなあ」みたいな目つきで穂田が僕を見た。
 「なんだよ?」僕が穂田に言うと、穂田はなぜか悔しそうにビールを1杯飲み干した。

 「探偵ってなに?」春菜ちゃんが嬉しそうに満面の笑顔で言った。
 「かわいいなあ...」僕は一目で春菜ちゃんを気に入ってしまった。