この『落日の翼』は、硫黄島航空戦を舞台とした作品です。

時系列的には、『戦空の翼』の後のお話しになりますが、登場人物は異なっております。



硫黄島の防衛に当たったのは、主に横須賀海軍航空隊と第252海軍航空隊で編成された通称『八幡部隊』でした。
第252海軍航空隊は、『戦空の翼』でマーシャル諸島へ派遣されていた航空隊ですが、その防衛戦で壊滅し、劇中のとおりに内地で再編され、硫黄島防衛の為に進出しました。
















この後、連日の米海軍機動部隊艦載機の空襲を受け、硫黄島に進出した八幡部隊は壊滅してしまいます。

本作品では、この硫黄島航空戦に於いて、予想外に善戦した、第301海軍航空隊の戦闘601飛行隊所属の旧式零戦の活躍も描いております。

ここで、横須賀海軍航空隊と第252海軍航空隊と八幡部隊を編成し、硫黄島の制空権の防衛に当たった第301海軍航空隊について、説明しておきます☝️

◎第301海軍航空隊◎
日本海軍第301航空隊は、戦闘316と601の2個飛行隊で編成されていましたが、本来316飛行隊は、局地戦闘機『雷電』を運用する予定となっていました。
しかし、雷電の開発が難航した事に依って実戦配備が大きく遅延し、301飛行隊に配備されたのは、当初は試作機、つまり『試製・雷電』の1機だけだったので、部隊の錬成は、主に零戦を用いて行われました。
その後、量産型の雷電が徐々に配備され機数も増えて行きましたが、中部太平洋戦域での戦況の悪化から、サイパン島の航空勢力を増強する必要が発生し、進出する部隊には301空が抜擢されました。
しかし、局地戦闘機である雷電の航続距離の不足から、雷電を配備していた戦闘316は止む無く雷電を手放して、機材を厚木の第302航空隊へ譲渡し、急遽、零戦に装備転換してサイパン島へ進出しました。
しかし、米海軍機動部隊の艦載機との連日の激しい邀撃戦と波状的な空襲に依って、サイパン島へ進出した戦闘316飛行隊は壊滅してしまいます。
その後、戦闘316飛行隊は本土の館山基地で再編され、当初の予定どおりに雷電を運用する事になるのですが、今度は日本海軍機動部隊のマリアナ沖海戦での惨敗に依ってサイパン島が陥落寸前となり、次はマリアナ諸島と日本本土の中間点に有る『硫黄島』が狙われる事になります。
依って、再編された316飛行隊は、雷電での錬成が進んでいたにも拘らず、硫黄島への進出には航続距離が不足している理由から、またも雷電から零戦へ装備転換し、同じ第301航空隊の零戦隊である戦闘601飛行隊と共に、硫黄島へ進出する事になりました。
その結果、当時の主力型の零戦52型を十分に揃える事が間に合わず、戦闘601飛行隊のベテランの搭乗員には52型を、そして若い搭乗員へは旧式の21型を与えて機数を確保しました。
その結果、硫黄島へ進出して来た第301航空隊には、旧式の零戦21型が混ざっていた訳です。

▼手を緩めない米海軍機動部隊の空襲に依って、硫黄島の日本軍航空勢力は瞬く間に減退します。
たった三回の邀撃戦と空襲と艦砲射撃で、7月4日には、ほぼ壊滅してしまいました。





この硫黄島の陥落に依って、ここは、サイパンより日本本土へ飛来する、あの憎きB-29の不時着地となった共に、米陸軍機が進出して以降、B-29は、P-51戦闘機の護衛を伴う様になりました。
サイパンの陥落と硫黄島の陥落の影響は極めて大きく、これを機に、日本の各地は、虐殺的な空襲を絶え間無く受け続ける様になります。
日本陸海軍の上層部は、この頃になると本土決戦を意識する様になり、それにシフトした事で、硫黄島を、そこで耐え忍んで戦う将兵等と共に簡単に見捨てたのです。