さて本題。
家の近所にあった、老舗のそば屋が閉店してしまいました。小学校の同級生の家族がやっていた店で、しょっちゅう行っていた、というほどではないにしても、年越しそばは毎年その店で食べましたし、町内会でもよく使いました。
そうなると不思議なもので、どうもそばが気になるのは、江戸ッ子の血でしょうか。
ところが、スーパーで生麺を買って、自分で茹でて作っても、そばだけはどうもうまくいかない。ガイドブックに載っているような名店は、確かにおいしいのですが、値段的にそうたびたびは行けないし……。
そんな時です。「第71章 蓮」で書いた、上野に蓮の花を見に行った帰りでした。ふと小腹が空いて、軽く何か食べたいな、と、御徒町で周囲を見回して。
「富士そば」の看板が目に入って来たのは。
正直、最初はあまり期待していませんでした。盛りそば並一杯だったら、腹具合からしてまあちょうどいいか、という所だったのですが。
「あれ? 富士そばって、けっこううまくないか?」
麺にしっかりコシがあって、そばの香りもそこそこする。つゆは最初は少々辛めだけど、だんだん薄まってちょうど良い具合になる……。並にしては盛りもいいし、テーブルの上にそば湯が入ったポットがあって、セルフで入れ放題なのもいい。
チェーン店でこの味、しかも300円だったらお得感があります。なんだか気になって、ネットで少し調べてみました。
麺は蒸し麺や茹で麺ではなく、手間とコストのかかる生麺を使い、注文を受けてからゆで、水で洗ってしめているそうです。あのコシは、この一手間から生まれていたのですね。だしも出来合いのものではなく、専用の機械で、店内で取ることにこだわっているとか。
以来、職場のそばに店があることもあり。
「ん~、今日はそばでも食って帰るか」という感じで、月に何度か寄るようになりました。
この富士そば、基本的にはどの店も、BGMには演歌が流れているそうです。元々は立ち食いそばチェーンだったこともあり、ちょっと女性一人では入りづらい雰囲気かもしれませんね……。私も四十代に突入して、こういった店が似合うようになってきたのかも(^_^;)
ところで、職場の最寄りの店。
二階席があるのですが。
ある日、二階に行こうとしたお客さんに、店員のおばちゃんが声をかけました。
「当店はセルフサービスですので、出来上がったらお声をかけさせていただきますが、よろしいでしょうか?」
「いいですよ」
アナウンスでもするのかな、と思っていたら、しばらくして、おばちゃん、二階に向かって、大声で。
「お二階のお客さ~ん、○○そば、上がったよ~!!」
そばを口に入れながら、肩を震わせて、必死で笑いをこらえました。
MNKNまんけん