源さんの散歩(1~200)
「ない袖は振れぬ」
コロナも随分と減少した。
社内の転勤や昇任人事の内示の噂も囁かされ、そんな噂に、そろそろどうですかと、コロナ減少を理由に課長を飲みに誘った。
そしたら、昇任胸算用を察したのか「ない袖は振れぬ」からと、笑いを浮かべ、珍しく手を左右に振った。
酒好きが断るくらいだから何かあるのかと気にもなったが、ご存じの通りコロナもそれほど心配しなくてもよくなったから是非とせがんだ。
そしたら、笑顔で快く応じて頂けました。
飲むほどに、
「無い袖も酒の友には長い袖」
となりました。
とても気分がよかったのでしょうね。
そんな嬉しい課長の気分を壊してはならぬと、客も少ないコロナ禍の夜店で「御馳走さま」と、会釈交じりの声を発し、
そして、
酒飲みにしては早い家路についた。
