ことわざ漫談小話
ことわざ小話 151~200
170「盗人の昼寝」
この「盗人の昼寝」なんて、あまり聞きませんが、これは、他人には分からない行動であっても、本人は目的があってすることの意になります。面白いことわざですね。それではばかばかしい小話をおひとつ。
「どうした?熊。月に向かって竹槍の真似などして?」
「これかぁ?」
「何だか知らぬが、夕暮れに飛び交う蝙蝠(こうもり)を落とす算段か?」
「この、俺の気持ちが分からぬようでは、お前は俺の友人とは言えぬ」
「何だとう?友人とは言えぬ?知らねぇからこうして聞いているのだ」
「知らぬわけないだろう。こうも景気が悪くちゃ、うまい魚も売れないから、俺なんかいまに野垂れ死だ」
「いまに野垂れ死だって、そりゃ、みっともねぇみじめな死に方じゃないか?」
「だからなぁ、俺はお前のツキまくっているあの丸い月を落として焼いて食おうとしているのだ」
「ええ!俺のツキにツキまつっているあのツキを落して食う?」
「あたりめぇだ」
「ああ、熊のけちなツキも、ついに落ちたなぁ」
「分からねぇやろうだなぁ、落ちる前にツキを食っちまうのだ」
「ええ!俺のツキを落ちる前に食っちまう?」
「やっとわかったか」
「ああ、盗人の昼寝とは理解に苦しむものだなぁ」
お後もよろしいようで、
満月をダンゴと間違える げんごろう