ことわざ漫談小話
ことわざ小話101~150
116「白眼視」
この白眼視とは、これは人を冷たく見る目付きをいいます。(故事参照)それではばかばかしいお話です。かっぱらいと盗人の巻きです。
「おい、熊。俺が来たからといって、そんな冷たい目で見るなよ」
「また、今夜の酒の肴だ、と言っちゃ、そうやっちゃめぼしい魚をさがしているのだろう?」
「え?違うね。おれは、お、お客だよ」
「ウソつけ、すきあらば、そう願っているのが何時もの八ちゃんだ」
「何を言っている。さっきから、俺はお客といっているじゃないか。何がすきあらばだ。泥棒猫のようなことを言うな」
「すきあらば、かっさらっていくのが泥棒猫の習性だ。すきあらば、かっぱらって行くのが八ちゃんの言わんとする習性だ」
「何だとう、さっきから、わけの分からぬことを言っちゃ、サバが死んだような白い眼で俺を見る。それじゃ、なぁ、その、ええ、かっさらっていくのと、かっぱらっていくのとは、どうちがうのだ」
「ああ情けない、恥しい心の置き場所に困って、泥棒のお勉強がはじまった」
「何がお勉強だ、ええ、だったらなぁ、そのちげぇをいってみろてんだよ」
「それじゃ、なぁ、教えてやる。良いか、『カサッ』と、音がして魚を盗むのが猫でなぁ、空っぽの心で来ちゃ悪気なく取っていくのがかっぱらいなのだ。良いか、分かったか。それぐらいなことは覚えておけ」
「それじゃ、聞くがなぁ、熊。いいか、俺んちの八百屋に来て、ええ、黙って白菜を幾つも一輪車に積んじゃ運ぶのを何というのだ。ええ、分かるか、わかんねぇだろうなぁ」
「バカにしちゃいけねぇよ、そりゃ盗人というのだ」
お後もよろしいようで「白眼視」でした。
ああ、どっちもどっちですね。良いじゃありませんか。お互いがそうなのだから罪など爪の垢ほどだね、きっと。
白い眼をナマズの目と間違える 源五郎