ことわざ漫談小話
ことわざ小話51~100
100「麻の中の蓬」
この「麻の中の蓬(よもぎ)」とは、善人と交わっていると、自然に感化され善人になることのたとえであります。麻の中の蓬って、どんなこと、についてはみなさんでお調べください。それでは毎度のばかばかしい小話です。
「おい、熊。お茶屋の次男坊が、朝早く来てなぁ、僕はアサの中の蓬なのかなぁ、と言ってさぁ、俺に蓬をくれというのだ」
「その次男坊は蓬を買って、どうすると言うのだ?」
「いや、蓬など、うちじゃ扱ったこともないしなぁ、今時、そんな季節はずれのものはその辺りの土手にだってまだ生えちゃい無いと言って、帰してやった」
「ああ、八ちゃんは勿体無いことをしたなぁ。だってなぁ、御茶屋の次男坊はピカソに似た絵を描くのだぞぅ。その次男坊が、朝早く八ちゃんちに来て、アサの中の蓬というのだから、そりゃ、相当のわけありだよ」
「何?わけありだ」
「八ちゃんの返事は、俺の魚屋の返事より威勢が良くて早いのが欠点で、そのような勿体無いことを時々するのだ」
「だけど熊、その勿体無いって、ええ、何の、わけありのことだ?」
「勿体無いってかぁ、そりゃ、俺の考えだがなぁ、御茶屋の次男坊が朝一番に来て、アサの中の蓬というのだから、朝早く取れた蓬でアンコロモチを拵えようとしたに違いない。アンコロモチは甘さで疲れをとるからなぁ」
「ええ?!あの次男坊がアンコロモチを食いたい・・だって?」
「そうでなけりゃ、ピカソに似たわけの分からぬ絵を描くぐらいだから精神や肉体ともに疲れて、その疲れをとる艾(もぐさ)の灸(きゅう)にと考えたかだ」
「ええ?灸だって?まだ若いのに灸か」
「それでなければ、蓬を湯に入れて朝風呂と洒落たかだ」
「だけど熊、みんな年寄りじみた考えだなぁ。ヤツはまだ若いのだぞぅ」
「だってなぁ、あの次男坊が若くたって、なにやかにやと面倒見ているのは俺達じゃないか」
「だから熊、次男坊は、朝早く、蓬のアンコロモチが欲しかったのだ・・」
「・・よし分かった。それじゃ俺がこれから市場に行って蓬をさがしてくる」
「ああ、八ちゃん、アンコウならうちの使え」
「え?アンコウ・・それは、今夜の酒の肴じゃないのか?」
お後もよろしいようで、「麻の中の蓬」でした。
そんな、ああ、分からなくなってしまいました。あわてなくたっていいから、あまいアンコロモチ食ってよく考えましょうか。疲れがとれて頭の回転だって良いですよ。
アンコロ餅だって食べたい 源五郎