ことわざ漫談小話
ことわざ小話51~100
97「頭の上の蠅も追えぬ」
このことわざは、自分じゃ何もできなく、自分ひとりの始末もできないことを言っています。それではまいどのばかばかしいお話し「八ちゃんは、野菜に目玉を描いているほうがぴったりだ」の巻きです。
「おい熊。俺は今度この町の議員になろうとしているのだが、どうも、俺じゃ荷が重いように感じるが、ええ、熊はどう思う?」
「何だとう!八ちゃんが、この町の議員に立候補だって。どこか、具合でも悪いのか、ええ、八ちゃん?」
「やろう、俺をバカにしているのだろう?」
「バカにしているどころか、俺は、そんな大変な仕事は止めろ、いや、考えるなといっているのだ。葉もの扱いの八ちゃんが議員になって、ええ、この店は誰がやるのだ?」
「だから、俺もそれが心配なのだ」
「心配なら議員など考えないことだ」
「だけど、一生に一度くらい良いだろうと思ってなぁ、夕べは寝ないで考えていたのだ」
「寝ないで考えることは、他にもたくさんあるだろう」
「え?寝ないで考えることが、他にもある、だって?」
「この店の改築だって考えないといけないし、連合八百屋の役員もやっているし、詩吟友の会だって、それに地元敬老会若手後押し会の会長だって大変な仕事だ。ほれ、なぁ、数えたって、いっぱいやっているじゃないか」
「おい、熊。おれは、そんなものは全部飽きた」
「ええ?そんなものは全部、飽きたって!」
「そうよ、夕べも指折り数えてみたが、どれもこれも、俺の考えに合うものがない。俺は、なぁ、本当に飽きたのだ」
「何が飽きただ。どれもこれも半端じゃないか。八ちゃんは、何もかもできそうになると途中から放り投げているのだ。それでなぁ、ええ、今度はそれに懲りず、議員になりたいだって?」
「ああ、俺はこの町を背負って立つのだ」
「八ちゃんが、ええ、この町を背負える、わけないだろう。頭の上の蠅も追えないのに、そんな無理な考えは、八ちゃんには向かない」
「え?俺じゃ、ダメか?」
「ああ、八ちゃんは、白菜や大根に目玉を描いているほうがぴったりだ」
お後もよろしいようで、「頭の上の蠅も追えぬ」でした。
そうですとも、自分が背負える荷なら、そりゃ良いでしょうが、話が下手で、慣れない仕事はやらないほうが身のためですね。
沼の議員に立候補したい 源五郎。