笑いのつぶやき
笑いの散歩101~150
113「如何様(いかさま)」
この如何様は時代劇の映画などでよく見るものですが、不正をして自分の利益になるように仕組んだり、騙(だま)したりするまやかしものです。あるいは、いかにもほんとうのように見せた似せものだったりします。それではばかばかしいおはなしです。
「おい、熊。お前は如何様(いかさま)商売か?」
「おっ!今日の八百屋の八ちゃんは、心臓に悪い言葉を平気で使うね」
「何だとう?心臓に悪い言葉だって。そりゃどう意味だ?」
「如何様と言えや、やくざや渡世人が使う言葉で、一般のかたぎの者は使わないぜぇ」
「へぇ、何を言うか、言葉には出さないが、その如何様根性で俺にタコやイカを売っているのは、どこのどなたさんだねぇ」
「え?俺がそのようなことするわけがないだろう。八ちゃんは、風邪でも引いて熱でもあるのか?」
「風邪なんぞ誰が引く、この前はヒラメとカレイをとっ違えていたじゃないか」
「自分が魚の名前を覚えていなくて、それをこっちになすりつけるとは八ちゃんも偉く値(ね)が下がってしまったものだ」
「何を言うか、勝手に値を上げて、俺がタコと言えや必ずイカとなるのだ」
「だから、なぁ、それは八ちゃんが悪いのだ。タコをくれと言っても、ああこれだ、こっちだと大声でイカを指さされちゃ、こっちはタコじゃなくてイカがほしいのだろうとなるのだ」
「それじゃ、ヒラメとカレイはどうなのだ?それだって如何様じゃないか?」
「そりゃなぁ、目玉が右じゃ嫌だというから、俺はあの時、困っちまったのだ」
「え?困る。何で、ええ、困るのだ?」
「酒の肴に、そりゃヒラメも良いだろうが、たかがひとりで飲む晩酌の酒の肴にヒラメはないだろう」
「俺はなぁ、昼飯にカレーライス食ったばかりだ」
「それで八ちゃんはカレーの次にはヒラメと思ったのか?」
「思ったのじゃねぇんだ。ひらめいたのだ」
「ひらめいた、なんて、ただで貰うイカさまは八ちゃんなのだ」
お後もよろしいようで、「如何様」でした。
そりゃ高級魚のヒラメだって、たまには良いじゃありませんか。え?お前はタコで充分だって。そりゃ私はタコが大好きですよ、だからと言って・・ねぇ。
人間どもは何かと贅沢と思う 源五郎