ことわざ漫談小話
ことわざ小話51~100
78「泣きっ面に蜂」
このことわざは弱り目にたたり目と同じく、悪いことのうえに更に悪いことが重なることを言っています。それでは毎度のばかばかしいお話しで、魚屋の熊と、八百屋の八ちゃんの「おれは将棋に負けて泣きっ面に蜂だ」の巻きです。
「熊は、また肉屋のサブちゃんに将棋負けたろう?」
「え、何で、ええ、八ちゃんがそれを知っているのだ?」
「何で、それを知っているか?それはなぁ、あのサブちゃんが嬉しそうに今夜は鱈(たら)があるから鍋をやりたいと、鱈の鍋にはどの野菜が良いかと、そりゃ三連勝とかいって、喜んでいた」
「あのサブちゃんは、俺が待ったして頼んでいるのにだめだといって、待ったしてくれないのだ。あの時は面倒なお客が来て、金目はうまいか、刺身は、今は何がうまい、タコはどうか、イカはどこのイカだ、ヒラメはどうの、カレイとヒラメはどうちがうのとか散々聞いて、あの客は鯖(さば)を買っていったよ」
「だから将棋に負けたというのか、ええ?」
「ああ、それになぁ、あのサブが意地悪にカレイとヒラメの説明が違っていたなどと、おれが一生懸命次の一手をどこにうつか考えているときのぽつりと気になることを言うのだ。こうしても、俺は魚屋の熊太郎だ、その熊がカレイとヒラメをとっちがえるか、なぁ、八ちゃん」
「だから、将棋に負けたというのか?」
「それに、次の一手を考えていると、あのサブは、下手の考え休むに似たり、などと、おれを急かすような意地悪を次々と言うのだ」
「まだ、有るのか?」
「それに、なぁ、八ちゃん・・」
「ああ、熊、俺もなぁ、この鯖を貰っていくよ」
「何?貰っていく・・ああ、今日は何と言う日だ」
「熊、それを泣きっ面に蜂というのだ」
「何だとう、この、泥棒が」
ああ、いけない日は誰でもこのようなものでしょう。だから、今日は仕事をやめ、褌を締めなおして明日に希望を持ちましょう。
寒さも来て、身震いする 源五郎