ことわざ漫談小話
ことわざ小話51~100
76「下手の考え休むに似たり」
将棋や囲碁などで、相手をひやかしたりして言うのが「下手の考え休むに似たり」などと言ってけん制したりします。ですから、ものごとでも下手な人が幾ら考えても時間の無駄であるといっているのです。
「これ権太、お前は何時まで、何を考えているのだ?」
「おらぁ、今、いいところまで考えが浮かんでいるから、余計な口出しはしないで、少し黙っていてください」
「何だとう?余計な口出しはするな。バカめ、お前はそのような尤(もっと)もらしく言っちゃ、何時でも長々とそこで休んでいるじゃないか。そうやって休むために土蔵に入って考えろと言ったのではないぞぅ」
「ああ、番頭さんが余計な口出しをするから、到頭逃げちゃった」
「何?逃げた。土蔵の中のネズミを何とかしろというのに、ええ、逃げたとは、猫が逃げたというのか?」
「そりゃ、決まっているじゃないか、倉のネズミだ」
「何、蔵のネズミ?」
「だって、俺に蔵のネズミを何とかしろと言ったじゃないですか?」
「そんなことはなぁ、倉に猫を入れれば、それで済むことじゃないか?」
「ですから、何匹の猫を倉に入れるかが問題じゃないですか?」
「バカもの、ネズミ一匹に猫一匹入れろといっているのではないぞ」
「だって、猫がでっかいネズミ一匹をぺろりと食えば、満腹になったその猫はネズミに踏んづけられても知らぬふりだよ、番頭さん」
「何だとう!ネズミに踏んづけられても、猫は知らぬふりだ?それじゃ、ネズミの数だけ猫を土蔵に入れろとお前は考えるのか?」
「だから、それじゃこのあたりの猫をかき集めても、このでっかい倉では猫の数が足りない、それをどうすれば良いか、ネズミを見ながら今考えていたのだ」
「オオバカもの、それを、下手の考え休むに似たり、と、言うのだ」
ああ、怒られましたね。みなさんならどうしますか?え!腹の空かした猫をかわるがわる入れろですって・・。さぁ、いい考えが浮かんだらそれを実行しましょう。
十月三日、ネズミも大好きな 源五郎