ことわざ漫談小話
ことわざ小話1~50
36「月夜に釜を抜かれる」
これは明るい月夜に釜を盗まれるということから、きわめて不注意なこと。或いは、油断の度がひどいことになります。それでは毎度のばかばかしい魚屋の熊と、八百屋の八ちゃんの「泥棒猫が魚屋の留守番をする」の巻です。
「おお、また泥棒猫が魚ぬすんで・・ほれ、飛んで行くぞぅ・・」
「え?騒々しいと思えば、八ちゃんか」
「おい熊、このまっ昼間に、猫に魚を盗まれることは『月夜に釜を抜かれる』ということだ」
「何だとう、月夜に釜を抜かれるだって?」
「ああ、だから、それはなぁ、きわめて不注意なことをいうのだ」
「何が不注意だ、ええ、俺が注意しないといけないのは八ちゃんの方だよ」
「え?注意しないといけないのは俺だって!?それは、また、どうしてだ?」
「それはなぁ、猫よりタチが悪いということだ。いつもうまそうな魚を、今夜の酒の肴だと横目で見ちゃ黙って持っていくじゃないか」
「え?俺が、そうじゃねぇよ、俺はなぁ、いま魚をくわえて逃げて行った、あの泥棒猫を言っているのだ」
「何?あの・・泥棒猫だとう??」
「そうよ、あのブチの泥棒猫だよ」
「何を言うか、泥棒猫は八ちゃんだよ」
「え?俺が・・泥棒猫だって」
「あの猫はなぁ、俺が肉屋のサブちゃんと将棋など指して居るときは、ちゃんと店の留守番しているのだ。だからなぁ、あれは店の留守番してくれた駄賃だよ」
「何!留守番の・・駄賃だって?」
へぇ!猫が魚屋の、お店の留守番するなんて、そりゃ珍しいですね。本当ですかねぇ。でも。そのような猫がいると面白いでしょうね。
猫にも弱い 源五郎