ベルギーブリュッセルのモネ歌劇場の19日までの映像からイタリアオペラも一つ聞いておこうと思い、アイーダを視聴した。トリスタンとイゾルデと違って初めて聴く歌手ばかりだ。歌は取り立てて言うことは何もないが、押しなべてキャラクターに合った配役で好演だった。モネ歌劇場のアイーダと言えば、前任の大野和市時代のウィルソン演出の抽象的な舞台が評判になったが、この2017年のLIVATHINOS演出も結構面白かった。

全幕とも平たいがゴツゴツした岩の上に穴の開いた四角い天井が吊るしてあるだけの簡素で抽象的な舞台。ダンサーが随所に出てくるのはトリスタンとイゾルデの演出に似ている。1幕1場の出征シーンでは背広を着た男性ダンサーと奴隷役の女性ダンサーが踊り、女性ダンサーは舞台に残りアイーダのアリアのバックでも踊る。2幕1場のバレエ音楽もバレエというよりはダンサーが踊る。2場の凱旋の場では合唱団に振り付けを付けているようだ。凱旋の場のバレエもバレエではなく奴隷役の女性ダンサーが手を縛られて行進する。全幕を通じてエジプト人はエジプトのピラミッドの壁画に出てくるような獣や魔物のマスクを付け魔術的存在として表現されており、エチオピアの奴隷はかなり虐げられている。祭司長ランフィスはグロテスクなコスチュームだ。ラダメスは現代服風で3幕のアイーダも現代風の色仕掛けなのがちょっと浮いている感じはするが、全体として特に現代社会への読み替え演出という訳ではなさそうだ。でもこれほど奴隷をひどく扱う演出も珍しく、これは何かのメッセージなのかもしれない。
https://www.lamonnaie.be/fr/sections/388-mm-channel
こちらの紹介サイトも合わせてご覧いただきたい

https://www.lamonnaie.be/en/static-pages/635-aida

Conductor: ALAIN ALTINOGLU 
Director: STATHIS LIVATHINOS
Set design: ALEXANDER POLZIN
Costumes: ANDREA SCHMIDT-FUTTERER
Lighting: ALEKOS ANASTASIOU
Choreography: OTTO PICHLER
Chorus master: MARTINO FAGGIANI

Aida: ADINA AARON 
Radamès: ANDREA CARÈ 
Amneris: NORA GUBISCH 
Amonasro: DIMITRIS TILIAKOS 
Ramfis: GIACOMO PRESTIA 
Il Re: ENRICO IORI
Una sacerdotessa: TAMARA BANJESEVIC
Un messaggero: JULIAN HUBBARD

La Monnaie Symphony Orchestra and Chorus
PRODUCTION: La Monnaie / De Munt (2017) 

全幕舞台セットは同じ

 

第一幕第一場で背広の男性ダンサーが行進します

 

「勝ちて帰れ」のバックで女性ダンサーが踊ります。意味のある動きがバックについてるのはいいと思います。

 

凱旋の場では合唱団にも振り付けがついているようです

 

バレエ音楽のシーンはバレエではなく奴隷役の女性ダンサーが行進します。好き嫌いはあるでしょうが表現としては面白いと思います。

 

2幕フィナーレ

 

男性合唱団は獣風のかぶり物、女性合唱団は魔物風のかぶり物をつけています


祭司長のランフィスはかなりグロテスクです

 

3幕のアイーダは色仕掛けでかなり積極的です

 

天井をどうやって下ろしているのか吊り糸などは見えないのでよく分かりませんでした。

 

フィナーレの演出も良かったと思います。