今回の展示車両はKATO 10-428 お召列車1号編成 5両セットより「供捧車340号」です。
昭和時代後期のお召列車は、1960年に新規製造された「新1号御料車」とこれを挟むようにして編成された4両の供奉車からなる5両編成でした。
供奉(ぐぶ)とは「礼をつくして目上に仕える」という意味で、新1号御料車を両脇から挟むように連結された、お仕えの車両です。実際には皇宮護衛官、警察関係者、宮内庁関係者、国鉄(JR)関係者が乗り込む車両ということになります。

「供奉車340号」は、お召列車1号編成の御料車次位に連結されている随行員添乗用の車両です。この車両も「鉄道模型宝石化計画」のセオリーにのっとって、GSIクレオスのGX100番「スーパークリアーIII(光沢)」を使用してクリアコートを施してあります。
その構造は、トイレ・洗面所(車体中央の白窓部分)を境に、前後で異なっています。赤系の内装で仕上げられた半室が1等部分で、警察・皇室関係者が添乗していたと思われます。この半室は、窓際に、窓を背にした形で、ソファータイプの一人掛けの椅子が整然と並んでいるのが特徴です。
この部分、KATOオリジナル製品では、赤茶系のモールド色で仕上げられた椅子が表現されていますが、私の場合、さらに荘厳さを引き立たせるために、徹底的にツヤを消したワインレッド色の吹付塗装で表現しました。椅子を一個一個塗装するという手もありますが、Nゲージサイズの場合、その車両の室内を一番イメージ付ける一色を選んで車内パーツ全体に吹付塗装する方が、表現力としてはシンプルかつ効果的です。

この艶消し塗装ですが、実は、長年の私のノウハウが隠されています。塗料にもいくつかの種類があり、GSIクレオスの製品に限っても、アクリル系塗料と水性塗料があります。この水性塗料ですが、フラットベースを多めに添加して、徹底的にツヤを消すと、乾燥後に、布地のような、ふかふかとした柔らかな表面を表現できるのです。
但し、この方法には重大な欠点があります。それは、塗膜が非常に柔らかいということです。塗膜の表面を荒くしてツヤを消すというフラットベースの作用原理から考えれば当然のことではありますが、爪が当たった程度でも簡単に塗面に傷がついてしまいます。そのためこの方法は、車内など手が触れる可能性がない場所に限って使用しています。
アクリル塗料のフラットベースでは、添加のし過ぎは白化現象の原因になってしまうので、このような表現には向きません。なお、まさかとは思いつつ念のために書いておきますが、塗料とフラットベースの組み合わせは、アクリル同士、水性同士が鉄則です。両者を混ぜることはできません。

逆サイド側からの眺めです。右側の半室は2等室部分で、昭和時代の旧型客車にあったような、背が直立しているボックス席が並んでいます。おそらくここは、鉄道関係者が添乗するエリアだったのでしょう。モケット色は、国鉄のいわゆる「鉄道モケット」色で、ざっくり言えば紺色です。子供の頃は様々な車両で使用されていましたが、当時の印象によれば、かなり濃いめの紺色だったと記憶しています。

Nゲージ車両の車内はかなり暗いので、やや明るめの色を使用してデフォルメをかけます。使用色は「ミディアムブルー」です。これも徹底的にツヤを消して使用しています。
余談ですが、近年のKATO製品ではブルーシートと称して、座席部分のパーツが白成形ではなく青色成形されたものが出回っています。上記のデフォルメの原則から言えば、明るめの色を使用したほうが良いのですが、さすがにあれでは水色です。やりすぎです。ちなみに、明るめの色を使用しながらリアリティを壊さないようにするには、ややくすんだ感じの彩度の低い色を使用するのがコツです(ただし例外もあって、上記のワインレッドような色をドーンと使用してインパクトを狙う場合もあります)。
さてこの供奉車たち、昭和初期に製造された車両ですが、新1号御料車と編成を組むようになった際に、近代化が図られていたのが特徴です。この340号では、両車端上部に逆L型アンテナが装備されています。また、屋根のセンターラインに沿ってもアンテナが張られています。これはワイヤーアンテナの一種でしょうか。私は「三陸特」と呼ばれる無線技士の国家免許も持っていますが、それでも確たることはわかりません。いずれにしても警備警護用のものだとは思いますが、今日のような列車無線も実用化されていなかった頃から装備されていたものですので、当時としては相当高度な設備を備えていたであろうことは確かです。
この車両の屋根には、アンテナ同士を繋ぐような形で、ケーブルが張られています。私の場合「ウェザリング(汚し表現)」というのは滅多にやりません。特に鉄道車両の場合は、編成全体の統一感というか、均一性のバランスが重要なので、ウェザリングをするとなれば、汚れた理由(パンタのない車両であっても、隣の車両にパンタがあれば、屋根上に赤茶けている部分があるなど)やストーリー(編成の一部の車両だけが工場出場直後であるなど)を構成して、それを忠実に再現する必要があるからです。
今回は「ウェザリング」ではないものの、ケーブルのモールドの立体感を際立たせる加工を行いました。その手法として、モールドのキワに、ブラックのスミ入れ塗料を流し込んだのちに、エナメル用薄め液を綿棒に浸して拭き取りを行っています。

その後、屋根全体に460号と同様の艶消しクリアを吹いて完成となりました。
さて、いかがでしたでしょうか。
今後も順次、撮影が終わった車両からご紹介の予定です。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
昭和時代後期のお召列車は、1960年に新規製造された「新1号御料車」とこれを挟むようにして編成された4両の供奉車からなる5両編成でした。
供奉(ぐぶ)とは「礼をつくして目上に仕える」という意味で、新1号御料車を両脇から挟むように連結された、お仕えの車両です。実際には皇宮護衛官、警察関係者、宮内庁関係者、国鉄(JR)関係者が乗り込む車両ということになります。

「供奉車340号」は、お召列車1号編成の御料車次位に連結されている随行員添乗用の車両です。この車両も「鉄道模型宝石化計画」のセオリーにのっとって、GSIクレオスのGX100番「スーパークリアーIII(光沢)」を使用してクリアコートを施してあります。
その構造は、トイレ・洗面所(車体中央の白窓部分)を境に、前後で異なっています。赤系の内装で仕上げられた半室が1等部分で、警察・皇室関係者が添乗していたと思われます。この半室は、窓際に、窓を背にした形で、ソファータイプの一人掛けの椅子が整然と並んでいるのが特徴です。
この部分、KATOオリジナル製品では、赤茶系のモールド色で仕上げられた椅子が表現されていますが、私の場合、さらに荘厳さを引き立たせるために、徹底的にツヤを消したワインレッド色の吹付塗装で表現しました。椅子を一個一個塗装するという手もありますが、Nゲージサイズの場合、その車両の室内を一番イメージ付ける一色を選んで車内パーツ全体に吹付塗装する方が、表現力としてはシンプルかつ効果的です。

この艶消し塗装ですが、実は、長年の私のノウハウが隠されています。塗料にもいくつかの種類があり、GSIクレオスの製品に限っても、アクリル系塗料と水性塗料があります。この水性塗料ですが、フラットベースを多めに添加して、徹底的にツヤを消すと、乾燥後に、布地のような、ふかふかとした柔らかな表面を表現できるのです。
但し、この方法には重大な欠点があります。それは、塗膜が非常に柔らかいということです。塗膜の表面を荒くしてツヤを消すというフラットベースの作用原理から考えれば当然のことではありますが、爪が当たった程度でも簡単に塗面に傷がついてしまいます。そのためこの方法は、車内など手が触れる可能性がない場所に限って使用しています。
アクリル塗料のフラットベースでは、添加のし過ぎは白化現象の原因になってしまうので、このような表現には向きません。なお、まさかとは思いつつ念のために書いておきますが、塗料とフラットベースの組み合わせは、アクリル同士、水性同士が鉄則です。両者を混ぜることはできません。

逆サイド側からの眺めです。右側の半室は2等室部分で、昭和時代の旧型客車にあったような、背が直立しているボックス席が並んでいます。おそらくここは、鉄道関係者が添乗するエリアだったのでしょう。モケット色は、国鉄のいわゆる「鉄道モケット」色で、ざっくり言えば紺色です。子供の頃は様々な車両で使用されていましたが、当時の印象によれば、かなり濃いめの紺色だったと記憶しています。

Nゲージ車両の車内はかなり暗いので、やや明るめの色を使用してデフォルメをかけます。使用色は「ミディアムブルー」です。これも徹底的にツヤを消して使用しています。
余談ですが、近年のKATO製品ではブルーシートと称して、座席部分のパーツが白成形ではなく青色成形されたものが出回っています。上記のデフォルメの原則から言えば、明るめの色を使用したほうが良いのですが、さすがにあれでは水色です。やりすぎです。ちなみに、明るめの色を使用しながらリアリティを壊さないようにするには、ややくすんだ感じの彩度の低い色を使用するのがコツです(ただし例外もあって、上記のワインレッドような色をドーンと使用してインパクトを狙う場合もあります)。
さてこの供奉車たち、昭和初期に製造された車両ですが、新1号御料車と編成を組むようになった際に、近代化が図られていたのが特徴です。この340号では、両車端上部に逆L型アンテナが装備されています。また、屋根のセンターラインに沿ってもアンテナが張られています。これはワイヤーアンテナの一種でしょうか。私は「三陸特」と呼ばれる無線技士の国家免許も持っていますが、それでも確たることはわかりません。いずれにしても警備警護用のものだとは思いますが、今日のような列車無線も実用化されていなかった頃から装備されていたものですので、当時としては相当高度な設備を備えていたであろうことは確かです。
この車両の屋根には、アンテナ同士を繋ぐような形で、ケーブルが張られています。私の場合「ウェザリング(汚し表現)」というのは滅多にやりません。特に鉄道車両の場合は、編成全体の統一感というか、均一性のバランスが重要なので、ウェザリングをするとなれば、汚れた理由(パンタのない車両であっても、隣の車両にパンタがあれば、屋根上に赤茶けている部分があるなど)やストーリー(編成の一部の車両だけが工場出場直後であるなど)を構成して、それを忠実に再現する必要があるからです。
今回は「ウェザリング」ではないものの、ケーブルのモールドの立体感を際立たせる加工を行いました。その手法として、モールドのキワに、ブラックのスミ入れ塗料を流し込んだのちに、エナメル用薄め液を綿棒に浸して拭き取りを行っています。

その後、屋根全体に460号と同様の艶消しクリアを吹いて完成となりました。
さて、いかがでしたでしょうか。
今後も順次、撮影が終わった車両からご紹介の予定です。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
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