身近になったコツコツ投資「低リスク」は思い込み | 明日につなげる情報箱 【MZ Trade Office.jp】 投資情報ブログ

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若い世代を中心に「コツコツ投資」に取り組む動きが出てきた。株式などの市場平均並みの収益を目指す「インデックス投資信託」を長期で積み立てる手法。だが、この流れが定着するかどうかは、今後の焦点になってくるだろう。

 ◇対象商品を絞り込んだつみたてNISA

 コツコツ投資が浸透してきたのは、投信積立を後押しする制度が広がり、初心者でも投資に踏み出しやすくなったことが大きい。

 株式や投信の運用益を非課税にする少額投資非課税制度(NISA)が2014年に始まり、18年には積み立て専用の「つみたてNISA」がスタートした。

 つみたてNISAは金融庁が対象商品を長期投資に向く投信約170本に絞ったのが特徴だ。購入時手数料が無料で、運用中に負担する信託報酬率が低い低コスト投信限定で、多くはインデックス型。投資初心者でも商品を選びやすくなった。

 このところ株式市況が好調だったことも追い風になった。つみたてNISAの投資枠をフルに活用するため、制度が始まった18年1月から毎月3万3333円を、日本を除く先進国株指数(MSCIコクサイ)連動投信で積み立てたとすると、19年12月で元本80万円に対し収益は約10万6800円になった。初心者でもその“効果”は実感できたはずだ。

 だが、株式運用のリターン(成果)は、収益を生むこともあれば、損失を負うこともある。長期投資が有効とされるのは、長期的にならせば年率5~6%程度の収益が期待できるためだが、短期では損をする局面は十分ありうる。近年、先進国株でもリーマン・ショックなどピーク時からの下落幅が約50%に達する暴落は約10年に1度、同10%以上の大型調整は1~3年に1度起きている。

 行動経済学の研究では、人は得る利益より、失う損失を重く受け止める傾向がある。相場下落で損失が出ると、投資が嫌になりやめてしまうケースは意外に多い。だが、長期投資に取り組むなら、短期的な相場の動きに一喜一憂するのではなく、続けることが重要になってくる。

 ◇理解されにくい「投資のリスク」

 カギとなるのは「投資のリスク」の考え方だ。資産運用には「リターンとリスク」がある。リターンはわかりやすいが、リスクには注意がいる。日常生活で「リスク」といえば「危険なこと」を指すが、投資における「リスク」の意味は異なり、リターンの変動のブレ幅を指す。ブレ幅が小さければ「低リスク」、大きければ「高リスク」だ。

 これは誤解を生みやすい。

 19年12月、20年度の税制改正大綱が閣議決定された。NISA制度を見直し、現行の「一般NISA」は24年から、つみたてNISA対象商品に限る積立枠と、従来通り現物株にも投資できる枠の「2階建て」に刷新することになった。

 この制度改正をめぐる報道で、つみたてNISA対象商品を「低リスク」と誤って説明をする記事が大手メディアで相次いだ。つみたてNISA対象商品は「低コスト」だが、そのすべてが、リターンのブレ幅の大きい株式を投資対象としており「低リスク」ではない。金融庁は一連の記事を「誤報」と断じる。

 「コスト」と「リスク」を取り違えたのだろうが、誤った説明がなぜ広がったのか経緯はわからない。だが、つみたてNISA対象商品は金融庁が選ぶため「国のお墨付きの初心者向け商品なのだから“危険”が少ないはずだ」と思い込んだ、という推測はできる。

 ◇リスクとどう向き合うか

 懸念されるのは、一般にもこうした思い込みを生みやすい素地があることだ。つみたてNISAなどで「コツコツ投資」が後押しされ、メディアや個人投資家ブロガーの情報発信で、長期的にはリターンが期待できることは伝わってきた。だが、インデックス投資は「低リスク」でも「安全な商品」でもない。下落相場になったとき、思い込みは失望に転じる可能性がある。

 コツコツ投資は身近になってきたが「国が勧めるから」「みんなが始めたから」では長続きしにくい。取り組むなら「長期・積み立て・分散」の効果を理解し、最悪時にどれぐらいの損失なら許容できるかを想定するなど、自分なりのリスクとの向き合い方を考える必要がある。

 

(毎日新聞 参照)