静岡の海(富士市→静岡市) | 日本一周(分割)自転車紀行

日本一周(分割)自転車紀行

2010年、MR4F(折りたたみ自転車)で突然西へ。
東海道、山陽道、山陰道を駆ける。

そして2年後、再び自転車に跨る…

ただし、自転車走行ではなく自転車旅行。
観光も食事も目的だし、宿泊はホテル。
普段は自転車に乗らない。

これでも日本一周できる…のか?


今回の失敗で学んだこと。
それは、無計画にも程度があるということだ。

未知の地は新鮮さが大きな楽しみにつながる。

一方で、行き当たりすぎては
逆に苦しむ羽目になる。


これまでは、そこそこ大きい駅に行けば
どうにかなると思っていた。

しかし、それは都心の考えだった。

今後はどんどん地方に行くのだから、
地方では地方なりの頭に切り替えねばならない。


考えたことはふたつある。

まずは次の目的地を複数定め、
その距離をしっかりと把握しておくこと。

そして、目的地周辺にネットカフェを探しておくこと。

目的地について詳細まで調べる必要はないが、
ざっくりと把握する必要はあるだろう。


今日はネットカフェでひたすら休み、
今後のことを考える。


ネットカフェは極めて有用だ。

涼しいし水分を補給できるし、
情報収集もできるし睡眠もとれる。

実に多くの目的を果たすことができる。


ただ、リクライニングシートは楽ではあるものの
疲れが完全にとれるわけではない。

やはり2、3日に一回は
ベッドの上で休んでおきたいところだ。


つまり、ネットカフェに泊まったときに、
次の日に泊まるビジネスホテルを探しておく。

そして、その次の日に訪れる
ネットカフェまで目を付けておくのが理想だろう。


もちろん予定を変えてもいいように、
複数の目的地を探しておきたい。

小田原でメモ用の小ノートを買ったことを思い出し、
目的地の駅前の地図をざっくりと書き記す。


次の目的地は清水とした。

地図を見た限り、
清水駅まではおよそ40kmだろうか。

自転車時間で考えれば3時間程度と、
物足りない距離ではある。


それにもかかわらず清水を目的地にしたのは、
腕の痛みが引かないからに他ならない。

太陽に曝すと腕の痛みは倍増するので、
とにかく日が昇っている間に走ることは極力避けたい。


初日のミスがここまで響くとは思わなかったが、
これも仕方がないこと。

ネットで調べ漫画を読みつつ、
ひたすら休む。


そして2010年8月30日17時過ぎ。

ネットカフェに入ってから12時間後、
ようやく店を後にする。


国道139号から県道396号に入り、
西へと進んでいく。

富士駅の標識が見えるので試しに向かってみるが、
それなりの大きさの駅。

駅前も賑わっている。


しかし、富士駅から少し離れると、
急激に寂しくなっていく。

やはりここが東京、神奈川とは違うところ。
中心部を少し外れると建物が極端に減ってくる。


地図を見ても沼津から富士は寂しく、
また富士から清水も寂しい。

だからこそ沼津から西に進むには準備が必要だったのだが…


富士川を渡ると東海道は東海道本線とともに南下。
細い道を通り抜けながら海へ向かっていく。

間もなく目の前に広い道路が見えてくる。

昨晩以来の国道1号だ。


ただ、当時の国道1号とは様相が違う。

まず車道のすぐ横に広い歩道がある。

当然街灯もあるので、
もう暗闇と格闘する必要はない。


そして左手には、
工場ではなくおそらく海がある。

「おそらく」というのは、
海自体はまったく見えないため。

由比海岸という標識はあるものの、
歩道の横には3mほどの高さの防波堤がある。


しばらく走るが、どうも釈然としない。

せっかく海沿いに来ているのに
その姿が見えなくては意味がない。

むしろ今の風景は、
工場地帯を走っていた時のものに近い。

無機的というか人工的と言ったらいいだろうか。

ひと言でいえば、
自転車で走っていてまったく楽しくない。


ついに我慢できなくなった。

自転車を横付けして踏み台にして、
防波堤を上がってみる。


紛れもなくそこには海が広がっていた。

目の前に並んだ無数のテトラポットに
波が打ち付けている。


湘南の砂浜とはまったく違った顔をした夜の海。

国道1号の灯りの中に仄かに浮かぶ海は、
壮大でいて暴力的にも感じる。


ここに来て初めて静岡県に来たことを実感できた。

やはり自然があるところで自然を感じられなくては、
自転車で走っている意味がない。

自転車は車と比べると速度が遅いため、
風景がより重要になるのだ。


防波堤の上に寝転び、
しばらく休憩する。

そして防波堤を降り自転車に跨ると、
再び西へ向かって走り出す。


今まで通り左には防波堤が立ちはだかっている。

しかし一度海の姿を見ると気分が変わり、
海の姿が想像でき波の音もしっかりと耳に入ってくる。


正面に大きな建物が見えてくる。

「駿河健康ランド」。
宿泊施設を備えた健康ランドだ。


「しまった、途中だったか…」
思わず呟く。


実は明日の宿泊を予定していたスポットであり、
清水駅の先にあると思っていた。

そのため、今日はまず清水駅のネットカフェに泊まり、
明日の早い時間からチェックインしようと思っていた。


清水駅からやや距離があることはわかっていたが、
まさか途中にあるとは思っていなかった。

ネットカフェで調べたにもかかわらず、
完全な調査失敗である。


つまり、いったん通り過ぎて清水に行き夜を明かし、
引き返してきてここに泊まることになる。

さらに翌日にはまた同じ道を清水駅に向かうことになる。

自転車でのそれは苦行以外の何ものでもなく、
可能な限り避けたいところだ。


かといって、今から泊まるのはもったいない。

今回の旅でホテルを利用するのは、
疲れを取るための非常手段。

チェックインからチェックアウトまで
目一杯利用して疲れを取りたい。

今から泊まると単に寝るだけになり、
それはあまりに贅沢な使い方だ。


いろいろ考えながら横を通り過ぎていく。

この付近から歩道は海岸を離れ街中へ。
30分ほど走ると清水駅へと到着する。


清水といえばサッカー。
清水商業高校や清水エスパルスで知られるサッカーの街だ。

さらに、清水の次郎長とちびまる子ちゃんの
舞台としても有名である。


そのため、清水駅の江尻口とみなと口には、
さくらももこが描いたイラストがある。

江尻口のイラストは笠をかぶり旅をしている女の子。

江戸時代のようなので、
清水の次郎長をイメージしたのだろう。

一方のみなと口は、
富士山を背景に女の子が茶摘みをしている。

なぜ港側に富士山なのかはわからないが、
特徴を伝えようとする思いはよくわかる。


もう夜なので店はあまり開いていないが、
清水駅前はそれなりに栄えている。

名の知れた市の中心駅なのだから当然…と思ったのだが、
清水市ではなく静岡市清水区だった。


かつては清水市だったものの、
2003年の新設合併により静岡市となったそう。

有名な市なのにもったいない限りである。


清水駅の広く綺麗なコンコースには
清水の案内板が置かれている。

例の健康ランドへの案内もある。

案内によると、清水駅から無料バスが
定期的に走っているようだ。


無料バスを使えるのであれば、
無駄な往復の労力を最小限にすることができる。

安心してネットカフェへと向かい休む。

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2015年5月2日

吉原駅(富士市)~清水駅(静岡市)
走行距離:約29km(google map)

■静岡の海
(富士市→静岡市)

地図の詳細
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