妖怪ロードと暗闇街道(境港市→米子市) | 日本一周(分割)自転車紀行

日本一周(分割)自転車紀行

2010年、MR4F(折りたたみ自転車)で突然西へ。
東海道、山陽道、山陰道を駆ける。

そして2年後、再び自転車に跨る…

ただし、自転車走行ではなく自転車旅行。
観光も食事も目的だし、宿泊はホテル。
普段は自転車に乗らない。

これでも日本一周できる…のか?


江島大橋から県道47号に入り、
境港駅を目指す。

県道47号は両脇に木が並ぶ並木道。

東海道ではよく見られた風景だが、
だいぶ懐かしい気がする。


地域によって景色は違うもの。

山陰といえばやはり海と高くない山、
そして大きくない街。

ちょっと違った風景が見えると、
やたらと物珍しい。


並木が見えなくなると、
今度は古い家が建ち並ぶ。

すっかり雰囲気のいい田舎町だ。

そして単線のJR境線の踏切を渡ると
線路沿いを左折。

すぐに正面に大きな建物が見えてくる。



日本一周(予定)自転車紀行-境港の並木道
境港の並木道

日本一周(予定)自転車紀行-境港の古い街並み
境港の古い街並み




建物の前面には「ゲゲゲの鬼太郎」のイラストが
大きく掲げられている。

「さすが鬼太郎で有名になった都市」と思いながらも、
街の規模、線路に似つかわしくない大きな駅舎に驚く。


しかし、近づいていくと
その疑問も解消する。

境港駅は巨大な建物の手前にある小さな建物。

単線のみが走る終着駅だけあってホームはひとつしかなく、
どちらかといえば「小屋」という言葉がしっくりとくる。


一見駅舎に見えたのは「みなとさかい交流館」。

どうやらレストランや
船と港の展示などがあるようだ。

それにしても無駄に巨大な気がするが…


駅前には銅像がある。

水木しげるが机で漫画を描き、
それを鬼太郎とねずみ男が見ている図。

隣にあるポストの上には、
一反もめんに乗った鬼太郎がいる。


そして駅前のロータリーを囲むように、
歩道に妖怪の像が並んでいる。

妖怪像は商店街に向かい、
商店街の歩道両側に続いている。


これこそが境港市が有名になった理由。

「ゲゲゲの鬼太郎」の水木しげるが境港市出身ということから、
数年前に「水木しげるロード」として整備。

商店街の店も鬼太郎色を加え、
妖怪の街として生まれ変わった。


境港は元々有名な港町ではあるが、
島根半島の北東に位置するため訪れづらいところ。

正直、僕も妖怪の街でなかったら訪れなかった。


それがここまで有名になるのだから、
わからないものだ。

実際に僕以外にも観光客は多く、
山陰の街ということを考えると驚異的だ。


駅前から妖怪像を一体一体写真に収める。

今回の旅が前回と違うのは、
デジカメを持っていること。

せっかくなのでとにかく写真を撮りまくる。


時刻は17時20分。

まだ残暑が残る季節とはいえ、
既に日は傾いている。

徐々に徐々に暗くなっていくのが実感できる。

そんななか、自転車に跨りながら、
急いで撮影→移動を繰り返す。



日本一周(予定)自転車紀行-境港駅
境港駅(中央下の小さな小屋)

日本一周(予定)自転車紀行-駅前の銅像
境港駅前の銅像

日本一周(予定)自転車紀行-ポストの銅像
ポストの上にも銅像が

日本一周(予定)自転車紀行-砂かけババア
砂かけババア

日本一周(予定)自転車紀行-ねずみ男
ねずみ男

日本一周(予定)自転車紀行-目玉おやじ
目玉おやじ




しかし、実際に来てみると、
なかなかよくできている。

古い商店街の中に銅像が並んでいるだけなのだが、
ところどころにうまく妖怪エッセンスを入れ込んでいる。

トイレのピクトグラムには、
鬼太郎と猫娘と目玉の親父が使われている。

電柱には防犯カメラ作動中として
「目玉おやじも見ているよ」の文字が並ぶ。

よく見ると妖怪広場にある街灯は
目玉になっている。


必要以上に妖怪の街を造り上げるのではなく、
街を残しながら妖怪を取り込んでいるのがいい。

思っていたよりも地味といえば地味ともいえるが。


日がだいぶ落ちてきた。

商店街の店はだいぶ閉まっている。

今日の目的地は米子。

まだ15kmほど先なので、
写真を撮り終えると早々に境港駅を離れる。



日本一周(予定)自転車紀行-街灯
目玉おやじの街灯




県道265号を南東へ向かい、
民家の中を走り抜ける。

あっという間に家は見られなくなり、
どんどん周囲に何もなくなっていく。


右手に米子空港が近づいてくると、
完全に何もなくなる。

そして道は左に折れていき、
国道431号・産業道路へと合流する。


この産業道路は、
奇妙なほど真っ直ぐ伸びている。

真っ直ぐな道は今までもあったが、
周囲に何もないことが助長。

不思議な存在感を醸し出している。


時刻は18時30分。
もうだいぶ暗い。

周囲に何もないこの国道に、
街灯はほとんどない。

車通りは多くはない。

不気味な雰囲気さえ漂う国道。
そして、米子市に入った直後に事件は起きた。


前回のような予兆はなかった。

走っていて徐々に違和感を覚え始め、
数十秒後にはそれが現実のものとなる。


2年ぶりのパンク。

山口県の欽明路トンネル以来のパンクは、
やはり周囲に何もない中での出来事だった。


しかも昼間だった前回とは違い、
今回は薄暗い中。

これ以上ないくらい悪条件が重なっている。


しかし、今回は僕にも用意がある。

自転車を柵に止め、
ウエストバッグから替えのチューブを取り出す。

さらにさらに暗くなっていくなか、
チューブを交換する。


やはり自転車旅行には、
替えのチューブが必要だ。

前回のような無計画旅行ならいざ知らず、
本来は必需品といってもいいだろう。


周囲は凄まじい勢いで暗くなっていく。
近くに街灯は一切ない。

無事にチューブを交換し終えた頃には、
もうほとんど何も見えなくなっていた。


再び国道431号を南東へ走る。

かなり暗い。

街灯がほとんどないので、
自転車のライトだけが頼りだ。


暗闇での走行は、
箱根、焼津、そして備前以来だろうか。

当時との違いは、
周囲にあまりにも何もないことと、

そして、ただひたすら
真っ直ぐに道が伸びていること。


箱根や焼津は山だったが、
その分周囲には木があった。

しかしここには本当に何もない。


遥か遠くまで見渡すことができ、
その遥か先には微かに光も見える。

箱根から降りた後、
沼津以降の国道1号に似ているだろうか。


あの時も周囲にはほとんど何もなく、
道はほぼ真っ直ぐに伸びていた。

ただ工場だけが見え、
精神状態は極めて良くなかった。


それに比べると、
今回は少し余裕がある。

確かにパンクこそしたが、
歩道がしっかりとあるし平坦で走りやすい。

暗いながらも、
それほど不安なく走っていく。


しばらく走り、道の脇に建物が見え始めると、
右折して県道317号に入る。

もうすっかりと米子市街。
普通の街中だ。


まだ米子駅までは距離があるが、
米子市は広範囲に街が広がっている。

名の知れた都市だけあって、
なかなか大きい。


今日宿泊するのは、
米子駅のふたつ手前、富士見町駅の近く。

宍道湖と中海の南から来た国道9号が近くを走り、
米子随一の繁華街もある中心街だ。


米原の交差点を右折して県道245号へ。
ここで“まさか”が起こる。


街中とはいえ灯りが少ないため、
歩道を安全に走っていた。

そんな薄暗い歩道に、
突然大きな裂け目が現れる。


あっと思う間もなく前輪が落ちる。
大きな衝撃が両手に走る。

確かめるまでもない。
完全にパンクだ。


これまで経験がないほど早く
空気が抜けていく。

とてもではないが、
自転車に乗っていられなくなる。


まさか1日に2度もパンクするとは…

荷物の都合もあり、
今回用意した替えのチューブはひとつだけ。

わずか1時間ほど前に使ってしまった。


ホテルまでは1km強。

止むなく自転車を押して歩く…つもりだったが、
空気の抜けがひどい。

完全に空気が抜けたタイヤは前輪から外れ、
真っ直ぐ押すことすらできない。


前回は1ヵ月以上走って1回しかパンクしなかったのに、
今回は数日で2回。

しかも、このパンクは
今までにないひどさだ。


何しろ引いて歩くことができず、
前輪を持ち上げながら歩くしかない。

これは本当につらい。

とてもじゃないが
ホテルまで歩く気にはなれない。


携帯電話を取り出して、
周囲にある自転車屋を探す。

さすが街中だけあって自転車屋は多い。


しかし時刻は20時過ぎ。
電話をかけても全くつながらない。

常識的に考えれば、
もう閉まっているのだろう。


諦めたくないので回り道をして自転車屋に寄るが、
やはりどこも開いていない。

これは本当につらい。

進む速度も遅くなり、
時間も余計にかかる。


腕がパンパンになる。

気持ちが滅入りそうになりながら、
頑張って進む。

そしてついにネオン街が見えてくる。



日本一周(予定)自転車紀行-県道265号を南下
県道265号を南下する

日本一周(予定)自転車紀行-県道265号2
県道265号を左へ曲がり国道431号へ

日本一周(予定)自転車紀行-産業道路
産業道路

日本一周(予定)自転車紀行-産業道路2
街灯がないので急激に暗くなる…



ここ朝日町は米子随一の歓楽街。

北東の富士見町駅に向けて上り坂になっており、
スナックやバーなどが軒を連ねている。

ひと言でいえば昭和の街。
地方の歓楽街のイメージそのままだ。


坂を上りきりホテルに自転車と荷物を置くと、
またネオン街へ。

「山陰海鮮 炉端かば 米子店」に入る。


ここはその名の通り、
山陰の海鮮を中心としたチェーン店。

今日はとにかくいろいろなものを
がっつり食べたかった。


大山Gビールを飲み、
地元の名産を食べる。

幻魚つまみ揚げ、カニジャン辛、あじハンバーグは境港、
長いもかまぼこは北条、赤天は浜田の名物だ。


たっぷり食べてたらふく飲む。

これまで以上に疲れた1日だけあって
いつも以上に食も進む。


出雲大社に松江城、水木しげるロード、
そして2回のパンク…

良くも悪くも、
今までにないくらい詰まった1日だった。

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2012年9月14日

西出雲駅(出雲市)~富士見町駅(米子市)
走行距離:約102km(google map)

■神話の国
(出雲市)
■水の都
(出雲市→松江市)
■妖怪ロードと暗闇街道
(境港市→米子市)

地図の詳細
ルートラボ




日本一周(予定)自転車紀行-朝日町
昔ながらの歓楽街、朝日町

日本一周(予定)自転車紀行-大山Gビール
大山Gビール

日本一周(予定)自転車紀行-幻魚のつまみ揚げ
幻魚のつまみ揚げ