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人生に迷ったとき、ときには毛嫌いしていた方向や、今まで歩んできた道を振り返ってみることも、大切なのかもしれません。なぜなら、人生に迷ったときというのは、今までの自分の物差しでは立ち行かなくなっているときだからです。
信じて歩んできた道を、引き返すことも決して間違いではありません。後退も、人生という長い目で見れば、立派な前進です。
戸澤 宗充「すべてを喜びとする。」
日蓮宗の尼僧である戸澤宗充(そうじゅう)上人は、行き場のない女性の駆け込み寺「サンガ天城」の運営者として注目されていました。以前、妙円寺でもご法話いただいた事があります。
戸澤上人は33歳の時、ご主人が事故で急逝し、2人の子供と共に生きていく事になりました。後に縁あって法華経と出会い、46歳で出家します。サンガ天城を設立したのは65歳の時でした。
とても熱心に法華経を信仰している戸澤上人ですが、若い頃は宗教が大嫌いだったそうです。「自分の事は自分で幸せにできるから、宗教に頼る必要はない」そう考えていたのです。
しかし不意にご主人が亡くなり、どうしていいか分からなくなりました。周りの人たちの励ましの言葉は、虚しく響くばかりでした。
そんな折、ご主人の書棚にあった法華経を手に取ると「是(こ)の好(よ)き良薬を今留めて此に在(お)く 汝取って服すべし 差(い)えじと憂うることなかれ」という一文が目に留まりました。
この良薬(法華経を表しています)を飲めばきっとよくなるから、その事を疑わず、飲んでみてください、という意味合いです。
戸澤上人はこのお経文を繰り返し唱えました。そして、「きっと良くなる」そう信じて、お題目も唱え続けました。すると涙があふれ、心が洗われていくように感じたそうです。
自分が毛嫌いしていたものが、いつの間にか自分を助けてくれていた、そういう経験をお持ちの方は少なくないと思います。
これが向いている、と思っていたものが実際は自分に合わず、自分には全く駄目だ、と思っていたものに適性があった、という事も世間では珍しくないでしょう。
戸澤上人は法華経に出会う前、会社勤めをしていた時期があります。とある職場では課長にいじめられ、それが我慢できず会社を辞めました。子育て中で金銭的な不安もありましたが、すぐに「うちにお茶を教えに来てくれないか」という声がかかりました。戸澤上人は茶道の先生でもあったのです。
思いがけず、お給料もそれまでの倍もらえるようになったそうで、まさに「災い転じて福となす」ですね。
窮地に陥ったと思っても、実はそれは幸せへの転換点かもしれません。
自分が気づいていないだけで、大切なものはすぐそばにあるんだ、という事も法華経では説いています。
困った時、迷った時は、持っているご縁、そして自分自身を見つめなおす良い機会にもなるのでしょう。
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