相櫻です!
これから先はBL的表現あり。
またこれは素人自己満足のために書く妄想小説です!!実際のものとは一切関係がありません汗。
大丈夫な方のみ、前へお進みくださいm(_ _)m
 

初めましての方はこちら。 

シリーズ最初はこちら。 






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Side A




このホテルから京都駅には、電車で数駅先。
こんな朝早くではお土産も買えないまま、オレは電話を切ってそう時間も経たないうちに、ホテルをチェックアウトした。

京都駅の新幹線乗り場の改札前にたどり着いて待ってる間、未だに信じられなかった。


あの電話がかかってきた時はもう7時を過ぎるか過ぎないかの瀬戸際で。
電話を切ってから気づいたけど、翔ちゃんはあの電話の前も何度かオレに架けてくれてて。
シャワーの後ドライヤー中にかかってきたのも、翔ちゃんだった。

翔ちゃんの家から東京駅までめちゃくちゃ遠いとは言わないけど、近い訳でもない。
なのに、こんな始発に近い新幹線に乗るとか、昨日もしかしてほとんど寝てないんじゃない??

「大丈夫……かな、翔ちゃん」

そんなことを思いながら、缶コーヒー片手に待つこと数十分。


「あ」

ベージュのダッフルコートにチェックのマフラーをグルグルに巻き付けた可愛い恋人が、改札から出てくるのが見えて、オレは駆け寄る。

「翔ちゃん!」

オレを見つけた翔ちゃんは、嬉しそうに笑って……でもすぐペコッと頭を下げた。

「ごめんな、雅紀……来るのが遅くなった」
「そ、そんな……翔ちゃん、顔上げてよ」

オレに言われて上げられた翔ちゃんの顔は、相変わらず可愛くて美人さんなんだけど。
疲れてるのに、無理をさせたんだ。
色白だからこそよく分かる、目の下のクマに胸が傷む。

「翔ちゃん……寝られてないんじゃないの?一体何時に起きたの?」
「ん?移動中に寝られたよ?隣も後ろもいなかったからリクライニングも気遣わなくて済んだし、今の新幹線って乗り心地いいのな」
「だからって……じゃあ昨日何時に寝たの?仕事終わったの遅かったでしょ……?」
「元々早く上がるつもりだったのがいつもの時間になっちゃっただけだよ?」
「……」
「雅紀?どうかした?」

どうしよう。
昨日のシフトは確か元々……
思い返して、自分が恥ずかしくなってきた。
上手く言えたと思ったのに。
翔ちゃんのことだから、きっとオレが拗ねたら今からでも京都行くって言うと思ったから、気にしないでもらいたくて。

だって、無理をして欲しいわけじゃないから。
少しでも休んで欲しい気持ちは……本当だったのに。
やっぱりオレ……

「ごめん、翔ちゃん。オレ、また拗ねちゃったんだね……あのクリスマスみたいに、翔ちゃんに気遣わせちゃった……」
「雅紀?」
「昨日大変だったんでしょ?ほとんど寝ずにこっち来たんじゃない?クマすごいもん……」
「……」
「ごめん」

あまりにも申し訳なくなってきて、今度はオレが頭を下げる。



すると。

「……今から新幹線乗るからなんて言ったら、きっと乗るなって言うと思ったよ、俺」
「え?」

ボソリと呟かれた言葉に、オレはハッとする。
翔ちゃんがオレを見ている。
少しだけ、その柔らかな唇が尖って見えるのは……気のせいだろうか。

「そりゃ疲れてたけどさ、俺も雅紀と京都行くのワクワクしてたし。ちゃんと仕事帰りに行けるように準備したのにさ、急なトラブルなんて、俺なんでこんな運悪いの?って」
「翔ちゃん」
「俺がここでドタキャンしたら、雅紀はまた俺に遠慮しちゃうって思ったから……何としてもここに来たかったんだ。もう新幹線乗ったって言ったら雅紀は俺を迎えに来るしか出来ないでしょ?そしたら遠慮なく楽しめるって思って……」
「しょ……」
「ねぇ、雅紀」

翔ちゃんがついっとオレとの距離を詰めて、上目遣いをする。
柔らかな頬が膨らんでるように見えた。
か、可愛い……っ。
ほんの少し小首を傾げたその仕草は、オレの弱点なわけで……顔が赤くなるのを感じる。
そのままの状態で、翔ちゃんは言った。

「雅紀は俺に会えて嬉しくないの?」
「なっ!そんなわけないじゃん!」

慌てて首を思い切り振った。
何言ってんの、この人は……!
一緒にいたかったからこそ昨日はショックが大きくて、だからちょっとばかし拗ねちゃって。
でも翔ちゃんに負担かけたくないって思ったから我慢してただけ。
会えて嬉しくないわけないのに、翔ちゃんは眉間に皺を寄せて、いかにも疑い深く俺を見る。

「そう?」
「嬉しいよっ!こんな朝早くから会えると思ってなかったから嬉しい!」

翔ちゃんの華奢な両肩を握って、鼻息荒く答えるけど、腕を組んだ翔ちゃんはまだ疑ってて。

「ちょっと迷惑だとか思ってない?」
「思ってない!めちゃくちゃ嬉しいよ……」
「ホントに?」
「ホントだよっ!オレ翔ちゃんと今日過ごすの諦めてたから、戸惑っただけ……!」
「ホントにホント?」
「ホントだってば!もうオレ、泣きそうなくらい嬉しい……」

いつのまにかオレはもう頬が緩むのを抑えられなくなっていた。
翔ちゃんが可愛すぎて、仕方ない。
つまり翔ちゃんは、オレが予想外に喜んでくれないから拗ねてるってこと……だよね?
うん、そうだよね?
あぁ……翔ちゃんってば、どうして年上なのにそんな可愛いの!
目に入れても痛くないってのはこうゆうことかなって思う。

「嘘。ホントはそんなに嬉しくないんじゃない?」

まだ疑い深く尖っている唇にキスをするために、華奢な体を包み込む。
抵抗なく収まった可愛い人の機嫌を取るべく、殊更優しくて甘いのをプレゼント。

「翔ちゃん、大好き。来てくれて嬉しい。一緒に今からいられるの、めちゃくちゃ嬉しいよ……」
「……ホントに?」
「うんっ!」
「……ふーん……?」

オレはもう飼い主の気を引きたい大型犬の気分で、もしオレにしっぽが生えてたら、そりゃあもう引きちぎれんばかりに振ってるところ。

そんなオレをしばらく目を細めて見ていた翔ちゃん。

「じゃあさ」
「うん、なぁに?」
「……もっかいキスして?そしたら信じてあげる」
「………!」

ニヤリと笑って言われた言葉が嬉しすぎて、人が普通に通るこの場所で思いっきり熱いキスをお見舞してしまった。
翔ちゃんは顔を真っ赤にして焦ってたけど、本気で怒ったりはしなかった。





京都駅から移動して、まずオレたちが向かったのは清水寺だ。
やっぱここは外せないでしょ?
ただ、ちょうど紅葉が色づく季節だからか、清水寺へ向かう道中は着物を着た人やら、外国の人やら……とにかく人がいっぱい。

「うわぁ、見て雅紀!きゅうりの一本漬!」
「へぇ、食べ歩きするんだ、美味しそう!」

しかも両脇には面白そうなお店がひしめき合ってて、中々目的の所にはたどり着かない状況。
ちっとも進まないのも、はしゃいじゃってるオレと翔ちゃんには全く問題ない。

ただ、寝起きの胸焼けで朝から何も食べてなかったオレのお腹が徐々に調子を戻してきて。
ちょうど階段に差し掛かったところで漂ってきた甘い匂いに、足が止まる。

「雅紀?どしたの?」
「ねぇ、翔ちゃん。ちょっとなんか食べない?オレ腹減っちゃって……」

オレの言葉に、翔ちゃんはふふっと笑った。

「俺も腹減った」
「ホント?」
「だって朝ごはん食べる暇なかったから……」

と言ったそばからきゅうぅっと鳴ったのはオレじゃなくて翔ちゃんの方。今度はオレがふふっと笑った。

「ホントだね」
「なんだよ、笑うなよ」
「だって可愛いから……」
「もう……」

赤らんでほんの少し膨れた顔は、まるでりんごみたい。ちょうどいいやと思った。

「ね、翔ちゃん。もしよかったらここ入ろうよ」
「何?」
「パイ屋さん。色々ありそうだよ」
「パイ?美味そう!」

オレの提案に、翔ちゃんはこれ以上にないくらい甘やかな笑顔を見せてくれて。
うっとりしながらも、周囲の視線を感じて慌てて翔ちゃんの肩を抱き寄せてお店に入った。


そこは本格的なアメリカのお菓子を提供してるみたいで、アップルパイが主力だけど、他にも色んなパイやケーキがあって、目移りしまくり。

「翔ちゃん、どれにするー?」
「えー……どれも美味そう……」

メニューを見ながらああでもないこうでもないと言うオレたちをお水を持ってきてくれたスタッフさんはクスクス笑いながら見守ってくれる。
迷いに迷った結果、アップルパイと紅茶のセットを選んだオレ。

「翔ちゃんは?決めた?」
「うーん、じゃあこれとコーヒーで」
「ではアップルパイと紅茶のセットおひとつとチェリーパイとコーヒーのセットおひとつですね」
「「はい!」」

偶然にも揃って返事をすれば、スタッフさんがまたクスクス笑った。



それから待つこと5分近く。
空腹がピークになったところで運ばれてきたのは、写真よりも美味しそうなパイたちで。






「うわー!美味そう!」
「ホントだー!」

子供みたいに大はしゃぎしながら、2人で手を合わせていただきますをする。

「あ、うんま」
「ホント?オレにもちょっとちょうだい」
「じゃあアップルパイ俺にも分けて?」
「それなら、半分こしようよ」
「あ、賛成」

大の大人が2人してカチャカチャとナイフとフォークを使って半分こ……それだけでも傍から見たらおかしな映像かもしれないのに(お菓子だけに)。

「翔ちゃん、チェリーパイ潰れてるよ?」
「うるさいな……なんで雅紀は綺麗に切れてんの?」

どうみても半分に見えないいびつなチェリーパイを前に笑いが止まらないオレを、むぅぅっとしながら見る翔ちゃんは……どう見えてるんだろうななんてほんのちょっと思ったりする。


「くふふ。チェリーパイも美味しいね!」
「……潰れたけどな」
「もう、怒んないでよ、翔ちゃん」

唇に付いたアップルパイの欠片をひょいと摘んで口にすれば、とびきり甘くて思わず笑う。
腹ぺこのオレと翔ちゃんのお皿はあっという間に空っぽになって。

「そろそろ行きますか」
「うん!」
「「ご馳走様でした」」

その声もハモって、笑いが止まらなかった。


翔ちゃんと一緒に暮らしたら……こうやって毎日いただきますとごちそうさまをハモれるのかな。
そんなことをふと思い浮かべた。





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タイトルのチェリーパイを無理くり入れましたー笑

いや、パイ屋さんは完全フィクションってわけでもなくて。
清水寺行くまでの道中、ホントにパイ屋さんがあったんですよ。アップルパイとレモンカスタードパイ的なのもあったかな?うろ覚えですが。
入ろうかなーって悩んだんですが、いかんせん人多いし旦那が先先行くしで結局行けず。

そこにチェリーパイがあったかは分かりませんけど、すごく気になったんですよねぇ……
今度清水寺に行く機会があったら探してみようと思います。

それにしてもこのバカップルが楽しくて仕方ない……❤