このお話、翔くん総受けのかなりぶっ飛んだ設定です。苦手な方は悪いことは言わないので、ぜひスルーしてください。大丈夫な方のみ、心してスクロールしてくださいねm(_ _)mもちろんですが、これは素人自己満足のために書く妄想小説であり、実際のものとは一切関係ございません( ゚ε゚;)

 

 

 

 

 

初めましての方はこちらへ
前の話はこちら。 

 

 
 
 
 
さてさて、再び視点を戻して……
 
 
 
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Side S
 
 
 
 
 
(居場所は……もう智の使い魔が知ってると思うよ)
(……動き出してるはずだから……情報が上がってるんじゃないかな)
 
 
あんなに手を尽くしても、見つからなかった。
だから藁をも掴むような気持ちで、俺は斗真の所に行ったわけだけど。
それでもああ言われたところで、完全には信じていなかったのに。
なんだよ、この示し合わせたようなタイミングは。
 
でも俺が戻ってくるやいなや使い魔の狼は、ちょっと興奮気味にずっと探し続けていた翔くんが見つかったことを、報告してきて。
……マジかと思った。
 
そして俺は今、こいつの背中に乗って、一緒に翔くんの所に向かってる。
……俺も飛んでいけばいいんだけど、ついこの前雅紀と潤の喧嘩を止めた時ぐらいに……体が疲労感で若干重い気がして、休憩しながら行くことにしたんだ。
 
 
力を使ったといえば。
俺がありったけ凍らせた奴らは……斗真に頼まれたとおりある程度離れて自分の身の安全を確保した後にちゃんと『解凍』しておいた。
凍らせたまま放っておくと……俺たちを起こした奴ら同様割れて消える運命。
まぁ、俺はそれでも別にと思ってたけど。
 
あれだけの数の支配者層の奴らが一気に消えたらと、斗真は心配してた。
あいつらがいなければ、あの白い部屋から逃れることもできるだろうに。
斗真のことはやっぱりよくわからない。
まぁでも……俺としてはそれも、どうでもいいこと。
 
 
人間が世界をひっくり返そうと。
吸血鬼の支配が続こうと。
どちらにせよ、俺は全く興味がない。
 
この世界が今後どうなったとしても、どんな形であれ永久に続いてくならば……別に構わないとすら思ってる俺。
 
 
 
ただ斗真に関しては……前より気になってる。
俺たちが目を覚ますときは何となくわかるという、あいつ。
翔くんに関しても、今起きてるのか、寝ているのかがわかるという。
彼と斗真は……それほどに近しいのか?
なんで?
 
(ちょうどいい機会だし、この際だから色々話しておきたいんだけど……)
 
もしかして黙って聞いてたら、教えてくれるつもりだったとか。
だとしたら俺、だいぶ失敗してる?
 
紅い宝石にしてもそう。
その身を案じて身代わりになったり、さらに言えば俺たちに保護を頼んだりしている。
そうまでして必死に守りたい紅い宝石って……なんだ?
 
 
(そんな人間は……いない。いるわけないよ)
(……いや、あの3人は確かに本当のことを言ってるよ)
 
 
斗真が守りたい……紅い宝石。
それから、同じく斗真がその存在を把握している翔くん。
 
なんだろう。モヤモヤする。
何か俺、大事なことが抜けているような……?
……ダメだ。
俺一人だと頭が混乱する。
カズか潤がいれば……うまくまとめてくれるのに。
 
 
「まぁ……いっか」
 
俺のつぶやきは、風に乗って消えた。
急がないと。
色々気になることはあるけど、とにもかくにもまず俺がすることは、ただ1つ。
あの3人よりも先に翔くんを見つけることだ。
それから……塒に連れて帰る。
 
 
「………あれ?」
 
今更だけど。
そういや見つけることに時間がかかっていたから、肝心のどうやって連れて帰るかってことは全く考えてなかったことを思い出す。
 
大人しく塒に来てくれると楽でいいんだけど、そうは問屋が卸さないかも。
ちょっと事情が違うけど、潤はかなり抵抗されてたっけ。
 
明らか寝込みを襲う潤が悪いんだけど、頬を切られたり、腹を蹴られたり、頭突きをかまされたり……傷はすぐ治る俺たちだけど痛いのは痛いわけで。
潤は結局キレて古い教会を爆炎で焼き尽くした。
 
俺も痛いのは嫌だ。
いっそのこと凍らせようか?
コールドスリープ状態なら抵抗されずに済むかも……ってことまで考えて首を振る。
 
「いや、止めよう」
 
失敗することは滅多にないけど万が一ってことがある。
下手したらあの3人に殺されるかもしれないから。
いくら俺が最強とはいえ、あの3人だって決して弱いわけじゃないんだ。
あいつらの本気を一人で受け止めるのはどう考えても厳しかった。
 
それに俺たち4人が本気を出したら、辺り一面使い物にならなくなるのは……今の荒廃した大地を見る限り明らかで。
そういうのは避けたい。
人間とか吸血鬼のためじゃなく、自分たちのいつかの寝床のために。
 
 
「……ん、分かった」
 
考え事が浮かんでは消えていた俺の意識に、話しかけてきた使い魔の狼に答える。
どうやら、目的地が近づいてきたらしい。
支配者層の奴らの住処から、ずいぶん遠いところまで来た。
 
この辺りは、あの3人がそれぞれ彼と出会った場所とはまた違う。
人間の賑やかな町でもなければ、人里離れた廃墟でもないし、深い森でもない。
木々も枯れた山々が広がり、岩石があちこち転がる、一言でいえば荒れた台地だ。
それでも少しばかり、人間の気配がする。
……格下どもの気配も。
とはいえ、人間が少ないからなのか、それとも昼間に隠れる場所が少ないからか、そいつらの数はまばらだった。
 
 
……これなら仮に襲ってきても、別にどうってことないや。
せっかく見つけた彼を、あいつらに取られるなんて我慢ならないし。
最強の名が廃る。
 
そうこうしてるうちに、それまでひたすら風のように走り抜けていた狼の四足がぴたっと止まったことに気づいた。」
 
「お、着いたの?」
 
声を掛けたが、狼は前方を見据えて返事をしない。
 
「どうした?おい?」
 
もう一度声をかけるが、前方を睨みながら毛を逆立てていて、俺の言葉が届いていないようだった。
……こんなことは珍しい。
何かわからねぇけど、使い魔が迂闊に近づけないものが前にいるってことだ。
 
 
格下はあり得ない。
むしろあいつらの方が俺を警戒するはずだ。
……気づけばの話だけど。
 
じゃあ支配者層の奴らか?
それもちょっとあり得ない。ここはあいつらの中心地からかなり遠く離れている。追いかけるのは厳しいと思った。
 
前は俺の背よりはるかに大きな岩が所々点在していて、この辺りを見渡せる崖がその奥に続いているように見えた。
すっかり歩みを止めて、どことなくしょげたように見える狼の毛並みをなでながら、俺は声を掛ける。
 
「お前、格下の奴らが来たら頼むな。俺が行くよ」
 
狼が心得たとばかりに鼻を鳴らしたのを確認して、俺は歩き出す。
見るからに足元の悪い場所。
襲われたら逃げるのも一苦労だ。
 
 
……大丈夫なのか、翔くん?
頭の中に疑問が湧く。
頼むから、無事でいてくれよ?
 
 
そう願いながら歩いていた俺は、ふと風に乗って香ってきたものに顔を顰めた。
 
決して嫌な臭いではない、それ自体は。
でも、香ってくることはあまりいただけない。
 
 
潤が持って帰ってきた血みどろのシャツに鼻を擦り付けた記憶がまざまざと蘇る。
それは何度もそうやって完全に匂いがなくなるまで嗅ぎ続けたもの。
あれと同じぐらい……薄いものではあるけど、間違いない。
翔くんの血の香りだ。
 
 
 
 
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はぁ……久しぶりに進めた気がします苦笑。
早いとこ書きたくもあったんですが、つじつまがあってるのかどうか((+_+))
だって早く翔くんに出会ってほしいんですもん。。