チェルミー図書ファイル196
今回ご紹介するのは、小川洋子さんの「不時着する流星たち」です。
皆さんは好きな作家の本はすべて読まれますか?(エッセイや雑誌インタビュー含む)
私はそうでもありません。全作品読んだことのある人は(多分)いなくて、何かしら読んでいないのがあったりします。そしてたまに有名作家の作品の中から、まだ読んだことのない本をチャレンジしてみるという読書法を地味な趣味にしたりしています。
そんな今回は小川洋子さんの作品の中から、未読本を選んでみました。その表題は「不時着する流星たち」
ヘンリー・ダーガー、グレン・グールド、パトリシア・ハイスミス、エリザベス・テイラー…世界のはしっこでそっと異彩を放つ人々をモチーフに、その記憶、手触り、痕跡を結晶化した珠玉の十篇。現実と虚構がひとつらなりの世界に溶け合うとき、めくるめく豊饒な物語世界が出現する―たくらみに満ちた不朽の世界文学の誕生!(BOOKデータベースより)
レビューサイトを見て、好評だったので読んでみたのですが、上のあらすじにもある通り、本書はヘンリー・ダーガー、グレン・グールド、パトリシア・ハイスミス、エリザベス・テイラーといった人達をモチーフにした短編集なんですね。
で、読んでいて思ったんですが、私の知らない人ばかり。エリザベス・テイラーは名前を聞いたことはあるけれど顔は知らないし、牧野富太郎さんとか日本人だけれど知らーん。
早々に、あ、ヤバ、これモチーフになった人のことを知らなきゃ楽しめないパターンじゃんと焦ったのですが、途中から先に人物紹介を見てから読むという手法を生み出し、最終的には物語自体を楽しむに徹しました。
解釈に悩むというか、これであってる?という作品もありましたが、どれも世にも奇妙な安定の不思議感。主人公のイカレ具合にぞくぞくしちゃう場面もあり。そういうのがお好きな人には10篇収録されているので、どーぞご覧あれです。
チェルミーお気に入りの話は、第七話の「肉詰めピーマンとマットレス」と第十話の「十三人きょうだい」
目次を見た時から気になっていたふたつは、想像通り一番面白かったです。
だって肉詰めピーマンとマットレスですよ?このふたつがどう繋がるのって思いません?でも繋がっていたんですよ!読み終わる頃には完全に肉詰めピーマンが食べたくなりますよ。
ちなみにこの章でモチーフになったのは、バルセロナオリンピック・男子バレーボールアメリカ代表とのこと。バルセロナオリンピック・・・知らん。私の記憶は長野から薄っすらとです。鮮明なのはトリノからです。(どれも冬季五輪・・)
この時はモチーフになった人物紹介から先に読んでいたので、肉詰めピーマンとマットレスとバレーボール選手がどうなるの???と最高にワクワクしていました。
そしたらまさかの感動系ですよ。それまでの作品はあやしい系だったのに、急にイイハナシが来るものだから完全に油断していました。
十三人きょうだいも同じような感じです。この作品のモチーフになったのは、牧野富太郎さん。日本の植物学者で、生涯で1500種類の植物を命名したスゴイ人。植物の命名にあたり、学者の私情をはさむのを嫌った牧野さんでしたが、唯一の例外で新種のササに奥様のお名前(スエコザサ)をつけたというエピソードがあるそうです。
十三人きょうだいは、ピーマンと違い、ちょっとミステリー要素を含んだ内容になっています。不覚にもラストは切なくて、涙が・・・・出はしなかったけれど、グッと来ましたね。
それにしても、パトリシア・ハイスミスがフランスへ引っ越す際に、ペットのカタツムリをブラに隠して何度も運んでいたというのは驚きです。やるなぁ。
次は私にもわかりそうな人物をモチーフにひとつお願いしたいですね。
好みの別れる一冊だと思いますが、10篇もあれば気に入る作品と出会えると思うので、ぜひお試しを。とにかく「十三人きょうだい」はオススメです!
以上「不時着する流星たち」のレビューでした。
