昔の頁 Ⅰ | Le quattro stagioni

Le quattro stagioni

あなたと心の四季を旅して・・・

 

 

 

 

Johann Sebastian Bach - Wachet auf, ruft uns die Stimme BWV 140,

 W. Kempff transcrip. | Alessio Bax









小さい頃 2段ベットの下の段を布で覆って
それが私の隠れ家だった

バッハのトッカータとフーガニ短調を流し
夢を見る少し変わった子供だった






       
『 旅する絵本 』



その絵本は 世界中の子供たちを癒す旅で 日々忙しくしていた
今回も 遠くの国の子供から依頼を受け貸し出され旅に出る事になった
旅に出ると数週間帰れない 絵本は子猫にお留守番を頼んだ



 



『 行って来るよ子猫ちゃん 旅先から手紙を書くからね 』
絵本は子猫の頭を撫ぜて おでこにキスをして旅に出た

次の日 司書のお姉さんがやって来た
本棚の空いた部分に違う本を入れようとすると 子猫が言った

『 ねぇ司書さん 僕がその空いた所に座っているよ
そうすれば本棚の本は倒れないから ねっ! お願い 』

子猫は絵本がいつ帰って来てもいい様に
どうしてもその場所を守っていたかった




 


子猫は暖かいストーブを焚いてもらい おいしいミルクを飲みながら
時折 知らない街から届く絵本が出した絵葉書を愉しみに
本棚の間に座り待っていた

数週間が過ぎ絵本が旅先から返却され やっと帰ってきた


『 ただいま いい子にしていたかい?子猫ちゃん 
君に素敵なお土産を買ってきたよ! 』


 

 



絵本が買ってきたお土産は 遠い街で売っていた
月の欠片で作った栞 とっても珍しいものだった

『 これはね子猫ちゃん 魔法の栞
挟んだページが本物になるんだよ 好きなページに挟んでごらん 』


『 あぁ 但し魔法は一回しか効かないから気を付けてね 』







子猫は嬉しくてしょうがない

さぁどのページに挟もうか このページも素敵だし
あぁでも こっちのページも素敵だよ
でもでも もっと素敵なページがあるかも知れない
子猫は迷って 毎晩色んな本を読んで見た

そうして 未だに子猫は栞を挟めない
決めかねては また次の本を読んでいる







そうなの・・・栞に魔法は掛けられていなかった
 

たくさん本を読んで色んな事を考えて 
泣いて笑って 子猫が早く大人になれる様
絵本が子猫に魔法を掛けたの



絵本は子猫の頭を撫ぜて おでこにお休みのキスをする
今夜も至福の読書タイム


早く大人になりなさい  早く大人になりなさい
本棚の一番上の段 絵本は優しく見守っている

 

 

 

 

 

 

2014に描いた 初めての夢のお話です