蟬噪(さわ)いで林愈々静かに
鳥鳴いて山更に幽なり
千五百年ほど前の中国の詩人王籍の句。
夏にお茶の稽古をしていると蟬時雨に包まれる。
先生のお宅は築二百五十年余りという立派な家で、庭も広い。
まさに蟬噪いで茶室愈々静か、である。
秋になって、今はツクツクボウシが多く鳴いている。
ツクツクボウシは寒蟬(かんせん)と呼ばれることがあるが、もう少し秋が深まって、ツクツクボウシの声がまれに聞こえるようにならないと寒蟬の風情とは言えない。
ツクツクボウシの鳴き方は他の蟬に比べると複雑で、耳につきやすい。それが今は多くの声がひっきりなしに響いていて、正直言って静かとは言い難い。
蟬にもいろいろいて、クマゼミや初秋のツクツクボウシを静かと感じられるにはまだまだ修行が足りない。