少し肌寒さを感じて、目が覚めた

5月の終わりといっても朝はまだ寒い




パパも娘もまだ寝ていたけど

いろいろと準備しなければいけない
ので、起き上がった




毎朝、起きるたびに思うけど




「やっぱり、夢じゃないよね、


そうだよね………」



今まで、嫌な夢や怖い夢をみて


朝、起きて、あー夢でよかった!


って思う事はたくさんあったけど




今は逆だね




悪い夢をみてて


まだ目が覚めてないだけなら


どれだけいいか……




なんて、考えても仕方ないんだけど





8時頃、もう、義母がやってきた



まだ着替えてない



メイクもしてない



だけど、もうそんな事大した問題じゃない



慌てず、ゆっくり着替え出した





お別れ会は親族のみと言ったが、


親族以外で唯一、パパの会社の社長が来た


パパは父親がおらず、会社の社長さんが


父親代わりだった





8時半頃、私の親族もやって来た


9時過ぎにお寺さんも来て、控え室に


パパと挨拶に向かう




この時に「お布施」を渡す


この街の平均は35万と言われたが


封筒の中身は5万円しか入っていない




10時半 開式


長いお経が始まる




5歳の娘が案の定、じっとしていない


となりでクスクス笑ったり


私にコソコソ話しかけたりしている




そのたびに私も耳を傾けたり、顔を


覗き込んだりしていた



でも、気が紛れてよかった



娘がいなかったら、かなり辛かった

かもしれない




お寺さんが退席し、最後のお別れ


棺の中に花を入れていく


私は葬儀場で働いているので分かっていた


棺の中に花を入れたら、また花を渡される


何度も棺の中に花を入れるのだ




私は隅の方で傍観していた


まるでスタッフのひとりみたいに


これは誰かのお葬式で


私は今、仕事、している




そう言い聞かせて、何とか耐える


花が回ってくるのを避けて


じっとしていた




最後のお別れなのに


棺の中の息子の顔を見る事ができない




みんな、息子の名前を呼んで泣いている


そう、葬儀ではココが悲しみのピークなのだ




胡蝶蘭が用意された


これは逃げられないイベントだ




胡蝶蘭だけは近しい家族に手渡される


パパと娘と私が受け取る




息子の胸元に、そっと置く


顔はみれない、みたくない





棺のふたが閉められた





最後に棺のふたの上に花束を置くのだが、


ご親切に、この役目は私がするらしい




「どうぞ、真ん中に置いてあげてください」




葬儀場のスタッフに言われ




(知ってる……)




と思いながら


献花を置く




終了だ





120センチの小さい棺は


外に留めてある普通霊柩車に乗せられた