石川県によりますと、県内では23日午後3時時点で7人が死亡し、2人の行方がわからなくなっています。

<目次>
・死亡 7人
・行方不明 2人

死亡 7人

 

輪島市ではこれまでに6人の死亡が確認されています。

警察と消防によりますと、21日起きた土砂崩れで作業員など4人と連絡が取れなくなっていた「中屋トンネル」の周辺では、22日、およそ10人が救助されましたが、このうち男性2人が死亡しました。

また、21日から22日にかけて高齢の女性2人が土砂が流れ込んだ住宅や田んぼで、男性が川の下流付近でそれぞれ見つかり、いずれも死亡が確認されました。

県によりますと、輪島市ではこのほか1人が死亡したということです。

珠洲市では、若山町広栗で住宅が山の土砂に巻き込まれて1人が死亡したということです。

行方不明 2人

県が災害に巻き込まれたおそれがあり、行方がわかっていないとしているのは、能登町で1人、珠洲市で1人のあわせて2人です。

自治体や消防によりますと、いずれも川に流されたあと、行方がわかっていないということです。

安否不明 4人

一方、県は行方不明者とは別に、輪島市と珠洲市で連絡が取れず、安否が分かっていないとして、男女あわせて4人の氏名などを公表しています。

県は転居などで連絡が取れない人も含まれている可能性があるとしています。

この中には、21日、輪島市久手川町を流れる塚田川沿いで住宅4棟が流され、連絡が取れなくなっている人も含まれているとみられています。

石川県が、連絡が取れず、安否不明者として公表したのは次の方々です。

▽喜三翼音さん、輪島市久手川町堂山、女性、14歳。

▽前川政二さん、輪島市久手川町古込、男性、80歳。

▽井角祐子さん、輪島市久手川町池田、女性、68歳。

▽貞廣一枝さん、珠洲市大谷町、女性、79歳。

県は心当たりがある人は危機対策課076-225-1306まで連絡してほしいとしています。

警察 消防 自衛隊など約400人態勢で捜索

石川県輪島市では川沿いにある住宅4棟が流され4人と連絡が取れなくなっていて、23日から警察などが捜索にあたっています。

輪島市の久手川町では大雨の影響で21日塚田川が氾濫し、住宅4棟が流され、住んでいたとみられる4人と連絡が取れなくなっています。

23日も午前6時すぎから警察や消防、自衛隊などがおよそ400人態勢で、上流から下流にかけ、川の中や氾濫で周辺に流出したがれきなどが積もった場所で捜索にあたりました。

隊員たちは大量の流木やがれきを声をかけながら1つずつ撤去していき、スコップで土砂を取り除くなどしていました。

警察と消防によりますと、22日、塚田川の下流付近で、男性1人が大量の流木に埋もれているのが見つかり、死亡が確認されたということです。警察は連絡が取れなくなっている4人のうちの1人の可能性もあるとみて、身元の確認を進めています。

捜索にあたった愛知県警察本部の山本泰司機動隊長は「被害が大きくて驚いた。地図上では狭い川だったが、氾濫したことで捜索範囲が広くなっている印象だ。まだ、危険な場所もあり、重機ではなく人の手による捜索が中心だが、安否が分からない人たちを一刻も早く無事な状態で見つけ出したい」と話していました。

孤立 56か所(午後3時)

石川県によりますと、23日午後3時時点で輪島市、珠洲市、能登町のあわせて56か所と行き来ができず、孤立しているということです。

地域別
▽輪島市
南志見地区、西保地区、大屋地区、鵠巣地区、河原田地区、七浦地区、浦上地区、本郷地区のあわせて40か所、

▽珠洲市
宝立地区、上戸地区、若山地区/大谷地区のあわせて14か所、

▽能登町
北河内地区と田代地区のあわせて2か所。

避難所に避難 632人(午後3時)

石川県によりますと、今回の大雨で開設された避難所に23日午後3時の時点で、輪島市で536人、珠洲市で92人、能登町で4人の、あわせて632人が避難しています。

断水 5060戸(午後3時)

石川県によりますと、停電による配水施設の停止や水道管の破損で断水が相次ぎ、23日午後3時の時点で輪島市では3086戸、珠洲市では1744戸、能登町では230戸のあわせて5060戸で水道が使えなくなっています。3つの市町では現在22台の給水車が活動しています。

停電 約3500戸(午後6時)

石川県内では、大雨による土砂崩れで電線が切れるなどして能登地方であわせておよそ3500戸で停電が続いています。

午後6時の時点で
▽輪島市ではおよそ2400戸、
▽珠洲市ではおよそ850戸、
▽能登町ではおよそ290戸、
▽穴水町では10戸未満が停電しています。

北陸電力送配電によりますと倒木や浸水などで道路状況が悪化しているため、ほとんどの地域で復旧の見通しは立っていないということです。

仮設住宅の団地が被害 別の場所への避難余儀なくされる人も

石川県内では今回の大雨で複数の仮設住宅の団地が被害を受け、別の場所への避難を余儀なくされている人たちもいます。

輪島市中心部の仮設住宅では、片づけなどに追われながら影響の長期化に不安を募らせる声が聞かれました。

能登半島地震のあと、被災者向けの仮設住宅として整備された輪島市中心部の「宅田町第2団地」では、今回の大雨で近くを流れる河原田川が氾濫し、およそ140棟ある住宅のほとんどが浸水被害を受けました。

中には建物の一部が壊れた住宅もあります。ことし5月から妻と息子と3人で暮らしていた池田清さんは、近くの病院に避難をして寝泊まりしています。

23日朝は妻と一緒に仮設住宅に戻り、泥をかぶって使えなくなった布団や座布団を片づけたり、水浸しになった床を拭いたりしていました。

池田清さんは、「避難先の病院からは、診療に影響があるので、ほかの場所に移ってほしいと言われています。しばらくはここに住めそうになく、今夜寝泊まりできる場所も決まっていない状況で、この先がとても不安です」と話していました。

妻の池田秀子さんは、「ようやく仮設住宅での生活に慣れて落ち着いたと思っていたやさきだったので、むなしくてしかたないです」と話していました。

「輪島塗」の仮設工房 8割が浸水被害

能登半島地震のあとなりわいの復興支援のため、輪島市で整備が進められている「輪島塗」の仮設工房は、今回の大雨で8割が浸水被害を受けました。一部は、床上まで水につかって使用できなくなったということです。

「輪島塗」の仮設工房は、プレハブの建物の内部を壁で仕切るなどして、輪島市内の各地にこれまでに47室整備されています。

このうち、河井町の輪島塗会館と鳳至町の「めっこ広場」に整備されたあわせて7室は、床上まで水につかり使用できなくなったということです。

また、杉平町の輪島消防署前と鳳至町の「いろは蔵跡地」のあわせて31室は、床下まで水につかりました。

今回の大雨で、整備されている47室の8割にあたる38室が浸水被害を受けましたが、建設中の29室は被害はありませんでした。

県によりますと、床上浸水で使用できなくなった7室については、仮設工房の建設を助成する中小企業基盤整備機構が、24日以降、復旧に向けた調査を行う予定だということです。

仮設住宅の団地 裏山崩れ 土砂や倒木迫る

敷地の一部が「土砂災害特別警戒区域」に指定されている輪島市の仮設住宅の団地では、今回の大雨で裏山が崩れて土砂や倒木がすぐそばまで押し寄せたことから、入居者が不安を感じています。

輪島市横地町にある仮設住宅の団地「横地町第1団地」は、敷地の一部が、斜面が崩壊した際に建物に被害が出て住民に大きな危険が及ぶおそれがある「土砂災害特別警戒区域」に指定されていて、今回の大雨で裏山の斜面が崩れて土砂や倒木がすぐそばまで押し寄せました。

氾濫した河原田川から100メートルの場所にあるこの団地は、最大3メートルの浸水が想定されていて、今回は、川からあふれた水は来なかったものの、山から大量の雨水が流れ込んで敷地内が冠水しました。

この団地に入居している北明さんは「仮設住宅のすぐそばまで土砂などが流れ込んできて怖かった。大雨がまた降ればさらに山が崩れるおそれがあり、とても怖い」と話していました。

妻の君枝さんは「地震で自宅が全壊して、入居当時は寝るところがあればいいという思いだった。やっと落ち着ける場所ができたと思った矢先に今回の大雨があり、この先がとても不安です」と話していました。

輪島 市内の全小中学校を臨時休校へ

今回の大雨の影響で石川県輪島市は、市内のすべての小学校と中学校で24日と25日は、臨時休校にすることを決めました。

輪島市教育委員会は、市内では、土砂などが流出している道路があり、安全に登校できる環境が整っていないとして、市内すべての小学校と中学校あわせて12校で、24日と25日、臨時休校にするということです。

輪島市内では校舎が床上浸水したり周りののり面が崩れたりする被害を受けた学校もあり、26日以降の授業を実施するかどうかも今のところ決まっていないということです。

一方、石川県によりますと、珠洲市や能登町など能登地方の5つの市や町の小中学校ではあすは、通常どおり授業を行うということです。

能登町 北河内地区長「電気つかず断水状態 住民心配している」

孤立状態が続いている石川県能登町の北河内地区の区長がNHKの電話取材に応じ、「電気はつかず、水道も断水状態で住民みんなが大変心配している」と話していました。

能登町にある北河内地区の池田光正区長によりますと地区の複数の場所で土砂崩れや川の氾濫などがあり、21日から孤立状態が続いているということです。

池田さんは、「土曜日の朝からひどい雨だと思っていたら、親戚から電話で『大変だ』と連絡があり、外をみると川は氾濫していて土砂崩れも起きて車は動かせない状態になっていた。ことしのはじめに地震がありみんなが大変な状況で、ようやく落ち着いてきたと思ったら記憶に無いような大雨になった。住宅や道路は地震のとき以上の被害になっていて住民みんなが大変心配している」と話していました。

池田区長によりますと、現在、地区には12世帯25人ほどが居住していますが、ほとんどが65歳以上の高齢者だということです。

また、地区では1人が行方不明となっているということで消防などによる捜索活動も続いているということです。

池田区長は、「電気はつかず水道も断水状態で、夜は懐中電灯やろうそくで過ごしています。水や食料など支援物資はきのうから自衛隊が徒歩で届けてくれて大変助かっています。固定電話は使えるものの、携帯電話が使えず、外で連絡をとることができないほか、情報把握も難しい状態です。神経が高ぶっているので今はなんとか持ちこたえていますが、町や県にはできるだけ早く復旧をお願いしたいです」と話していました。

林官房長官 “物資輸送 国の職員派遣も”

林官房長官は23日午前、松村防災担当大臣から被害状況について報告を受けるとともに、今後の対応を協議しました。

このあと記者団に対し「石川県の珠洲市や輪島市の避難所では、物資が足りていないところがある。輪島市の町野地区、門前地区では本日、天候が回復したことから、自衛隊ヘリなどを活用してアルファ化米1万食、携帯トイレ8000回分などを輸送することとしており、午前中にも到着する予定だ」と述べました。

また22日、馳知事から国の職員3人を派遣するよう要望されたことを明らかにした上で「きょう早速、内閣府防災担当の審議官を派遣し、さらに引き続き2人の職員を派遣することとした。岸田総理大臣の指示に基づき、被災地が能登半島地震からの復旧・復興の途上であることも踏まえつつ、地元自治体と連携し、ニーズをよく把握した上で対応にあたっていきたい」と述べました。

【給水情報】

大雨の影響で石川県珠洲市では、22日夕方の時点でおよそ1700戸が断水していて、23日、給水車による水の提供が8か所で行われています。

正午まで
▽大谷小中学校
▽日置公民館
▽若山小学校

午後1時から午後3時半まで
▽三崎公民館

午後1時から午後6時まで
▽道の駅狼煙
▽自然休養村センター

午後3時45分から午後6時まで
▽みさき小学校

24時間利用可能
▽三崎中学校

1世帯あたり20リットルまでで珠洲市のホームページで、給水が行われている場所や時間を確認できます。

【通信影響】午後7時

大雨の影響で石川県の一部の地域では現在も携帯電話などがつながらなかったり、つながりにくかったりする状況が続いています。

23日午後7時までに影響が確認されているのは、
▼NTTドコモ
▽輪島市▽珠洲市▽能登町▽志賀町のそれぞれ一部の地域。

▼KDDI、▼ソフトバンク、▼楽天モバイル
▽輪島市▽珠洲市▽能登町のそれぞの一部の地域です。

また、NTT西日本は、輪島市でフレッツ光やひかり電話などがおよそ430回線利用できなくなっているほか、固定電話がおよそ600回線利用できなくなっています。

珠洲市では固定電話がおよそ140回線利用できなくなっています。

【宅配影響】

大雨の影響で石川県の一部の地域では現在も宅配便の配達で遅れなどが続いています。

▼ヤマト運輸
荷物の預かりや配達を徐々に再開していますが、
▽輪島市、
▽珠洲市の一部、
▽能登町国重では現在も停止しています。

全国からこれらの地域に向けた荷物の預かりも停止しています。

▼佐川急便
荷物の預かりや配達を徐々に再開していますが、
▽輪島市、
▽珠洲市、
▽能登町では遅れが出ています。

全国からこれらの地域への荷物の預かりについては、遅延を了承してもらった上で、受け付けているということです。

専門家“ふだんから防災情報を活用し備えを”

能登半島地震を受けて整備された複数の仮設住宅が記録的な大雨で浸水したことについて、専門家は生活の利便性や災害リスクの低い用地が少ない地域の実情などを踏まえるとやむをえないとしたうえで、ふだんから防災情報を活用し備えることが重要だとしています。

石川県によりますと、今回の記録的な大雨で能登半島地震の被災者が暮らす仮設住宅が浸水し、輪島市と珠洲市であわせて6か所にのぼりました。

仮設住宅で被害が出たことについて大雨災害や防災に詳しい静岡大学の牛山素行教授は、生活の利便性や住民の意向、それに災害リスクの低い用地が少ない地域の実情を踏まえると、やむをえないとしています。

また、今回、浸水した仮設住宅の中には洪水の浸水想定区域に含まれていない場所もありましたが、牛山教授によりますと、いずれも谷底の平地や川が土砂を運んで形成された平野といった低い土地だったということです。

そのうえで能登半島には比較的小さな川が多く、浸水想定区域の指定が進んでいない可能性があるということです。

このため、住宅が川の縁と同じ高さに建っているかが浸水のおそれがあるかどうかの目安になるため、ハザードマップを活用しつつ、どのような場所に建っているか知っておくことが大切だとしています。

牛山教授は「あふれない安全な川や崩れない安全な山はない。ふだんから防災情報を活用しいざというときに備えてほしい」と話しています。

「まれな雨」地震で大きな被害の能登半島北部に集中

記録的な大雨となった石川県では、その地域にとって100年に1度よりも頻度が低い「まれな雨」となった地域が、1月の能登半島地震で大きな被害を受けた能登半島の北部に集中していることが防災科学技術研究所の分析でわかりました。

防災科学技術研究所は、降った大雨がその地域にとってどれほど多く、危険性が高いものかを雨量以外のデータで伝えるため、過去のレーダーによる解析データなどから「どのくらいの頻度で起こりうるものなのか」を6段階で表しています。

今回の大雨で分析したところ、22日明け方までの24時間雨量では輪島市と珠洲市のほぼ全域と能登町の北部付近で6段階のうち、最も起きにくいことを示す「100年に一度よりも頻度が低い」“まれな雨”となっていたことがわかりました。

その範囲は東西およそ60キロ、南北およそ10キロと、ことし1月の能登半島地震で大きな被害を受けた地域に集中していることが確認できます。

時系列でも分析をしていますが、「記録的短時間大雨情報」が発表されていたおととい(21日)の午前9時ごろからわずか3時間ほどの間に輪島市中心部や珠洲市を含む能登半島の北部がまれな雨を示す「紫」に変わっていて、短時間で急激に状況が悪化したこともわかります。

2024年9月23日 22時03分NHK NEWS WEBより転載