旧優生保護法(1948~96年)下で障害などを理由に不妊手術を強制されたのは違憲だとして、各地の被害者が国に損害賠償を求めた訴訟の上告審判決で、最高裁大法廷(裁判長・戸倉三郎長官)は3日、旧法が憲法13条(幸福追求権)と14条1項(法の下の平等)に反すると判断し、国の賠償責任を認めた。不法行為から20年で賠償請求権が消滅する「除斥期間」の適用は、「正義・公平の理念」に反するとして否定した。


 最高裁が法令を違憲と判断するのは戦後13例目。札幌地裁提訴分を含む5件に対する統一判断で、同種訴訟への影響は必至。未提訴の被害者を含む全面救済に道を開くことになる。
 5件は札幌市北区の小島喜久夫さん(83)が札幌地裁に起こした訴訟のほか仙台、東京、大阪、神戸の4件。損害額算定のため審理を仙台高裁に差し戻した1件を除き、被害者一人あたり1100万~1650万円の賠償を命じた二審判決が確定した。裁判官15人全員一致の結論。
 判決理由で戸倉裁判長は、旧法が憲法13条で保障される「意思に反して身体への侵襲を受けない自由」を侵害するとし、「特定の障害がある人を対象者と定めて区別することは差別的取り扱いに当たる」として違憲と判断。最高裁として初めて、立法行為そのものが違法だと認定した。
 除斥期間については、国による主張が「信義則に反し、権利の乱用として許されない」場合は適用しないとする新たな考え方を提示。「被害者側の認識を問わず、一定の時の経過で」権利を消滅させると解釈した1989年の最高裁判例を変更した。
 5件の二審判決は、いずれも旧法を違憲と認定。札幌高裁などの4件は除斥期間の適用を制限し国に賠償を命じた一方、仙台高裁は除斥を理由に請求を退けていた。旧法を巡っては、これまでに全国12地裁・支部で39人が提訴している。
■岸田首相「政府として心から深くおわび申し上げる」
 岸田文雄首相は3日、最高裁判決を受け「多くの方々が不妊手術を強いられ、多大な苦痛を受けた。政府として心から深くおわび申し上げる」と記者団に述べた。月内に原告らと面会し、謝罪を直接伝える意向を表明。判決内容を精査した上で、被害者に対する新たな補償のあり方について、早急に結論を得るよう担当閣僚に検討を指示した。

2024年7月3日 15:08(7月4日 1:37更新)北海道新聞どうしん電子版より転載