「おやじ元気? こっちは変わらずやっている」。記者の父(74)は認知症を患い3年前から札幌市内の精神科病院に入院している。月に数回見舞いに行き、寝たきりの父に声をかけている。
 父と同居する母が、同じ話を繰り返すなどの異変に気付いたのが5年ほど前。特に困ったのは徘徊(はいかい)だ。携帯電話を自宅に置き忘れるため、丸1日以上見つからないこともあった。そこで大いに役立ったのが、かかと部分に衛星利用測位システム(GPS)を備えた靴。徘徊しても大体の居場所を把握でき、早期発見できたケースもあった。
 警察庁のまとめでは、認知症やその疑いで、2023年に全国の警察に届け出があった行方不明者は延べ1万9039人。高齢化の進行で今後も増えるだろう。GPSなどの新しい技術の発展は、苦悩する家族にとって精神的に肉体的に大きな支えとなる。
 父が認知症になり一つだけ良かったと思えることがある。それは認知機能が失われるまでに、感謝の言葉を照れずに何度も言えたこと。「父さん。今まで育ててくれてありがとう」
( 花城潤 )

2024年9月26日 10:06北海道新聞どうしん電子版より転載