キャベツが青虫を養う理由 3 | 野人エッセイす

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森羅万象から見つめた食の本質とは

青虫がキャベツの外葉を食べて消化、葉の上に小さな緑の丸い糞を残すと葉に付いている微生物がそれを分解する。人間の汗に含まれる有機物を皮膚の微生物が分解、無臭にするのと同じ仕組みだ。

雨水や夜露がそれを根元に運び込み、さらに分解し切れなかった糞を地表の微生物が完全に分解する。

キャベツにしてみれば食われる葉の量よりも得られる対価のほうがはるかに大きい。

葉はいくらでも作れるが動物が持つリン酸は作れないのだ。

だからこそ広くて大きな葉を青虫の為に量産するが人に食わせる為ではない。

人は青虫がキャベツを一方的に搾取していると思っているようだがそうではない。

青虫の大きさは想像つくだろう。青虫が食べるキャベツの量はその体の数十倍だ。つまり食べたキャベツのほとんどは根元に戻している。しかも動物性たんぱく質を加えた肥料として。

物量と内容においてはキャベツのほうがはるかに利を得ているのだ。

これを算数で表すなら、キャベツが青虫に100円分の葉を与え、後で95円分返してもらい、金利として500円のリン酸をもらった・・と思えば良い。高利貸しのようなものだ。

キャベツにとっては5円で500円の買いものだが、とても大切な事業なのだ。青虫にとっての500円の商品はタダのウンチで、5円で住まいと食料を購ったことになるが、その5円をもタダにしてくれたキャベツは救いの天使だ。

金銭計算ではこのようになるが、双方にとってなくてはならないものだから「等価交換」、つまり持ちつ持たれつの共生だ。しかも互いに大きな得をしていることになる。

衣食住のすべてを頼るキャベツがいなければ青虫は生きて行けないがキャベツは生きて行ける。つまり余裕のあるキャベツのほうが味も懐もはるかに深く、青虫も喋もキャベツによって活かされている。そこに人が介入することでもないし、青虫は天敵ではなくキャベツのパートナーなのだ。だからキャベツはいつも蝶を喜んで受け入れている。

青虫との共生による成長の違いは近々画像で対比して証明してみせよう。

こうしてアブラナ科の植物は独特の「肥料調達」法を身に付けたが、それには気が遠くなるような年月を要した。



4に続く