▼ある時、神様は人間全員に向かってこう言いました。「これから100年のち、良いことをした人は天国に行けます。悪いことをした人は地獄に行きます。約束します。」

▼しかし、大多数の人間はこの約束を聞いておりませんでした。少数の人間しか聞いておりませんでした。

▼少数の人間はもちろん失敗や間違いをしますが、すすんで悪いことなどしませんでした。

▼大多数の人間は怠けたり、遊びほうけたりしました。

▼100年が経った後、少数の人間は天国に行けることになりました。また聞いていなかった大多数の人の中でも、真面目に良いことをしていた人は天国に行けることになりました。大多数の人たちは文句を言い始めました。

▼「聞いていない!」「極秘裏に約束された事だ!」「横暴だ」「そんな昔の約束など時効だ!」「大多数の人間の話を聞け!」などなど…

▼神様は困り果ててしまいました。天国に行ける人たちも困り果ててしまいました。神様はご自分のお力でこの局面をなんとかするのはたやすい事ですが…「約束を聞いていなかった人たち」もご自分の子供たちです。ほとほと困り果ててしまいました。

▼神様はもう一度、全員に向かって「100年のち、良いことをした人は天国に行けます。悪いことをした人は地獄に行きます。約束します。」と再び約束されました。

▼一番最初の約束を聞いていた人々はもちろん、今回の約束をきちんと聞いていた人々は働き、遊び、失敗も間違いもしながら100年待ちました。

▼最初は皆、約束を思い出しながら、生活をしていました。それでも怠け、人を陥れたり、人を欺いたり、人を殺したりする人が出てきました。

▼100年た経った後、神様の約束を覚えていて生活した人は天国に行けることになりました。しかし、怠けたり、人を殺したり、人を欺いたり、人を陥れたりした人々は文句を言い始めました。

▼神様は困り果ててしまいましたが、今回は「これは皆さんもきちんと聞いていた約束です」と言いました。

▼天国に行けない人の中の一人が叫びました。「神なんて、まやかしだ!神の約束がぜったいなのか!これは差別だ!神など殺してしまえ!」と。

▼天国に行けない人々は神をも消し去り、天国に行ける人々をも殺してしまいました。

▼彼らはその後も怠け、遊びほうけたりしました。楽しい日々です。

▼ある日、食料も酒、煙草、薬、服もなくなりました。何故ならばそれらを作っていた人々はもうここにはいないからです。彼らは揉めに揉めました。力が強いものが弱いものをおさえこみ、弱いものに食料や酒などを作らせました。

▼弱いものは神に祈りました。しかし、神はいません。自分で消し去ったのですから。

▼弱いものは遊んで暮らせないことを苦に自ら生命を絶ちました。自分だけが働き、遊べないのが嫌だったからです。

▼しばらくするとまた食料も酒も底をつきました。新たな弱いものができました。

▼こうしたことの繰り返しが延々と続きました。

▼どんどん人の数は減っていきます。最後の一人になった人間はいったいどうするのでしょうか。


※ぼくは別にアブラハムの宗教を信仰しているとか、神道を信仰しているとか、ではありませんし、世界のどの宗教もないがしろにしているわけではありません。上記の物語はとあるニュースを見て思いついたフィクションです。