演出として、何本も作品に携わってきたが…
役をはっきり決め切れないまま、お稽古が進んでいくのははじめての試みだ。

イメージがはっきりしていないのではない。
逆にはっきりし過ぎていて、
ありていに言えば、どの役者を当てはめてもしっくり来ることがなく、
また、その逆も真なりであったりする。

$偽典:もなから文書-サロメ稽古

つまり、このセリフの場所はこの役者さんが良いけれども、
同じ役でも最後はこの人が良いな、というように混同する部分と、
この役は、誰にも当てはまらないんじゃなかろうか、という部分が正直存在する。

その中で、役者さんもわかってくれた上でお稽古がスタートしている。
つまり、毎回がオーディション的に色々と試しながらやっているのだ。

実験はしているが、最初に言った通り、イメージがわいていないわけではなく、
今回の『サロメ』という作品に対して、僕のイメージが強すぎるのだと思う。

だと言っても、決めなければいけないのだが、次回お稽古日までに、僕はまたもがいて、シミュレーションを重ねて、いろんなパターンをイメージしていこうと思う。

しかしこれだけ鮮明にイメージできる作品があるということは本当に幸せだと思う。
役者さんにはしばらく迷惑をかけるが、この贅沢な悩みを抱えながら、作業を一つでも二つでも進めよう。