都内の名曲喫茶巡り第10弾。
夏の初めから始めたこの企画も最終回かな。
まだレコードは高価な贅沢品で、コンサートのチケットも庶民が気軽に買える時代じゃなかった昭和30年代。
最高レベルの音響機器を完備し、数百枚~数千枚のレコードを揃えた名曲喫茶は多くのクラシックファンの人気を集めた。
私はそれから数十年後の名曲喫茶デビューだが、部屋で安物のオーディオシステムで近所迷惑にならないように音量を絞って聴く音楽とは比較にならない迫力と繊細な音を求めて名曲喫茶に通ったものだ。
時には買ったばかりのレコードを持ち込み掛けてもらったこともある。
しかし、レコードやCDは誰でも買える時代になり、バブル期には数十万円のチケットもあっという間に完売という時代を経て、次第に名曲喫茶は姿を消していき、現在都内では10店前後しか残存しない。
荻窪にある名曲喫茶ミニヨンさん。
昭和35年創業で現在は2代目のマダムが店を守っている。
曲はシューマンのチェロソナタ。
タンノイのスピーカーからは繊細かつダイナミックな音が響いている。
このお店がありがたいのはお酒のメニューが充実していること。
それじゃあとビールとおつまみが選べるビールセットを注文。
●ビールセット(1,000円)
キンキンに冷えたキリンラガー。
つまみはレーズンバターを選択。
冷めたいバターと甘酸っぱいレーズンのハーモニー。
お客も2人になったのでリクエスト。
曲はベートーベンのピアノソナタ「月光」
ピアニストはバックハウス。
その後数曲を聴き、最後はこの店の名物を食べておしまいにしよう。
●マドレーヌ(160円)
お待たせしました。ケーキ入刀!
マダム手作りのマドレーヌはほんのり甘くてしっとりとした柔らかさ。
これ、ホントに美味いよ!
ここもいつまでも続けて欲しい名曲喫茶のひとつ。
美味しい食事に感謝を込めて
「ごちそうさま!」
【本日の名曲コーナー】
金色に輝く夢のように
ぼくの心に刻み込まれた
愛の記憶はまだ残っている
もう消えてしまった愛なのに
きみを初めて見たのは
その素敵な笑顔
ぼくを幸せにしてくれたんだ
その輝きで、ぼくらは若かった
エンリコ・トッセリの「嘆きのセレナーデ」
イタリアの伝説の歌手ベニャミーノ・ジーリ
録音が1926年とあるから日本では大正15年。
ポルタメントいうシュガーをたっぷり振りかけたバイオリンの甘~いメロディが時代を感じる。
もうこんな弾き方をするバイオリニストもいなくなった。
そういえば、某清涼飲料メーカーが缶チューハイに取り組むということで試飲を頼まれていた。
いやな甘さだけが残ると正気な感想を伝えておこう。
口直しにBAR夢酔亭オープン!
レモンの甘酸っぱい余韻が残るこのカクテルは、過ぎ去った青春時代を懐かしみながら聴くこの曲にピッタリだ。
【お店】
・名曲喫茶ミニヨン
・東京都杉並区荻窪4-31-3 マルイチビル2F
・http://cafe-mignon.sakura.ne.jp/