木村学習塾通信『むすび』 (449号) : 便利な公式は落とし穴 | 周防大島・塾と田舎暮らし

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<教える-教わる>の関係から、一人ひとりが結び合った関係に。子どもも大人も。そんな願いを込めて『むすび』。

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木村学習塾通信『むすび』  

2022.10.10 (449号) 

   

 夏野菜のきゅうりを次第に気温の下がるこれからも出来るだけ畑で採りたいと、数年前から秋口には地這いきゅうりを育てています。今年は本葉が3、4枚、苗の大きさ10センチくらいの時に台風11号が、そしてその10日後には台風14号が接近しました。11号の時はかぼちゃ苗を育てるのに使うキャップを、14号の時は寒冷紗を使い風よけをしました。災難続きでしたが何とか強風をしのぎ10本あまりの苗は元気にしています。本格的にハウスということにすれば良いのでしょうが、小さな菜園。このやり方で季節の変化の中で頑張ってみます。今年も先日さっそく1本食べることが出来ました。11月中旬くらいまで収穫できる予定です。お盆に蒔いた小さな一粒から数か月の成長。土と水と太陽と、すごいエネルギーだなとつくづく感心するとともに感謝です。 

 

便利な公式は落とし穴 

 ただ今テスト期間真っ最中。中学3年生数学のテスト範囲に「2乗に比例する関数」が入っているところが多いです。次のような問題があります。 

    y=-3x2(マイナス3エックスの2乗)についてxが1から3まで増加するときの変化の割合を求めなさい。 

 

 「変化の割合=yの増加量/xの増加量」という定義にしたがって式を組み立て求めていく場合より、ショートカットした方法の方が圧倒的に早く処理できます。学校でも先生に教わったというので、「どうしてそれで求まるの?」と聞いてみると「知らない」といいます。上の問題なら(1+3)×(-3)で求めることが出来ます。 

 

 「どうしてそれで求めることが出来るのか、聞かれて説明できないような人は、この方法は使ってはいけません(笑)」と私。文字式を使って変化の割合の定義から一緒に組み立てていって因数分解も使い最後のショートカットの方法にたどり着きます。「なるほど!そうなんだ。そうやってみると納得」との生徒の声。 

 

 理数の公式は覚えて使えればいいのですが、公式を導く過程も含めて納得しながらたどっておかないと、結果としての公式だけを覚えようとすると忘れがちで混乱します。時間もかかるし遠回りのように感じるかもしれませんが、そういった作業は必要です。告白すると、高校数学のデータ処理のところで分散を求める方法が2つあります。一つは定義に従って表のデータの一つひとつから表を仕上げて計算していきます。もう一つコンパクトな公式があります。「2乗の平均ー平均の2乗」なのですが、これが「平均の2乗ー2乗の平均」?とよく混乱していました。この公式で求まる理由をきちんとたどっていないからなのです。ただこの分散の公式は元データの数字が簡単なものでないと計算が大変になるので、定義でするか公式でするか使い分ける必要があります。 

 

 ただ、テスト前の子どもたちの気分からすると、より簡単な方法があれば間違いなくそちらを使いたいはずです。正解してなんぼのテストのための勉強なので、変化の割合の定義を覚えても答えが遠いなら、簡単な方法を覚えて解けるほうがいいに決まっています。 

 

 そして、こうした結果だけを丸暗記するようなテスト対応の勉強はきっと苦手な教科、嫌いな教科で多く行っているのではないかと想像します。嫌いな教科のテスト勉強はきっと苦痛でしょう。逃げ出したい、何もしたくない。でも悪い点数は取りたくない。だからなんとかしないとと思ってはいるがなかなか教科書、ノート、プリントも見返す気力も湧かない。萎える~。なんてことになっているのでは。いっそのこと「ノー勉」でテスト受ける!という強者もたまに見かけますが、赤点制度のある高校生では、丸っきりほったらかしてテストを受けるというのはかなり危険を伴います。少しでも点数につながるだろうと思えるところをきっと集中して覚え、テストが終わればすっかり忘れてしまう。その繰り返しになっているのではないでしょうか。 

 

 苦手な教科のそんな勉強方法だと、好きになるきっかけもつかめそうにないなあと思います。どんな教科でも少し深く探ってみると「へー、そうなんだ」「なぜそうなるの?」「これとあれはどのような関係になっているの?」􀡿と思えることが必ずあります。そういう出会いを何度か繰り返していると嫌いな教科も違って見えてくると思います。点数のための勉強とそうでない勉強。テストを気にせず勉強できる時期には嫌いな教科もなぜ自分は嫌いなんだろうと是非探りを入れてみませんか。