その「ものすごい鯖」を作ってる越田さん(お父さんの方)が、突然来てくれました。
息子さんと、おんなじ顏、おんなじ空気感です。
「mus musさん、やっと来れた!」って、喜んでいただきましたが、やっともなにも、こんなに早くお会いできるなんて。
ありがとうございますm(_ _)m
ものすごい鯖、なにがすごいかって、よくお客さんからいわれるんですが、ここでちょっと説明します。
茨城県の越田商店さんは、昭和22年から続く老舗の干物屋さん。
創業後、1972年からずっと無添加で干物を作り続けています。
漬け汁に、塩だけをつぎ足しして、漬け込む時間と、干す時間を微調整し、干物を仕上げる。
仕上がった干物は、身がしっとり、旨みが凝縮してて、美味しい。
それに、一瞬ウッっとくるはずの干物の変な匂いがしない(これ大事)。
そして、胃もたれしない(私の身体は、一口食べただけで、変な焼き魚は、一日中胃もたれの刑に処される…)。
…無添加。
今は、けっこう意識してそうしてらっしゃる生産者さんたくさんいますが、無添加にこだわり始めてから、今に至るまで、実に45年以上の時間がたっています。
その45年の間、戦後の高度成長期真っ只中、バブルもあり、科学が「発達」したと言われたり、効率化が叫ばれたりといった時期も長く続きました。
その間、心折れずに、よく漬け汁を守りきれたなと、不思議でした。
「もし私なら、途中で心折れそうになると思うんです。
だって、バブルのころとか、化学が一番偉い!って言われたら、勝てない気がして…」
「そうなんです。
もちろん、大変な時期、ありましたよ。
なんてったって、仲買人、スーパーの卸し先から、保存料入れてくれなきゃ買わないって言われるから(笑)
築地なんか、一切相手してくれなかった。」
「え、、、。やっぱりそんな時期あったんですね。」
「はい。
親父も、もういい加減、やめようと。
塩ぬって、化学調味料注射すれば買ってくれるなら、そうしよう、と。」
「…そんな世の中でしたよね、あのころ。」
「さて、じゃー、この漬け汁を捨てようという日になったその日に。
嘘みたいな話なんですが、その日に、東京の定食屋のオバちゃんから電話があって
『やっと見つけた!』って言ってるんです。
なんでも、うちの干物を売ってくれてた店がつぶれちゃって、他の干物を買って、店で出したら、こんなの干物じゃねーって言われたとか。
美味しくなかったらしいんです。
で、探してくれてたらしいんですよ。
『金額高くなってもかまわないから、送ってほしい』と。
嬉しくて。
干物を抱えて、店まで電車で行きましたねー、こんな性格だから。
そしたら、喜んでくれて。
お客さんにメニュー出したら、全員、鯖定食頼んでくれるんですよ!
僕もお腹すいたから、焼き肉定食頼んだら、お客さんから、
『オマエ、なんで鯖頼まないんだ?うまいんだぞ!ここの鯖定食。』
って言われまして。
そしたらおばちゃんが『この人が、鯖作ってんだよ!』と、紹介してくれまして。
『そうか、がんばれよ。俺たちがずっと食べ続けるから。ホントにうまいからな!』って。
そんなこと言われたら、捨てようとしてた漬け汁、捨てられないじゃないですか!
親父に相談して、一人でも食べてくれる人がいる限り、作り続けようって。
大変でしたけど、やっぱり自分の心の強さとかじゃなく、支えてくれる人がいたからこそ、守り続けられたんじゃないかと思うんです。
うちのまわりには、たくさんの干物造りの職人がいました。
職人同士、うちの漬け汁の方が、古いんだって、よく酔っぱらってケンカもしてましたよ(笑)
でも、こだわって作ってた職人たちは、買い手がつかなくて、みんなやめていきました。
添加物使ったところで、美味しくならないから、売れ行きも伸びないし、都会ではマンション暮らしでしょ?
干物なんて売れないんです。
だから、うち一軒だけしか残ってないです。
『あと、オマエんとこだけだから、守り続けてくれよな』
って。
みんなの思いも大事にしながら、がんばらしていただこうって思ってます。
買ってくれる人がいるから、僕らはがんばれるんです。」
…と、笑顔で、一気に語ってくれましたが。
しかし、それが、どれくらい大変なことかって、想像しただけでも、なんだか頭の中がクラクラしてきます。
跡継ぎの息子さんも、きっと、そんなお父さんたちの背中を、見続けて、カッコよさを感じたんでしょうね。
あー、もっとお話し聞きたい!と、思ったのですが、ここで終了。
私の頭は、クラクラしてましたが、ほんと、ものすごい鯖は、ものすごいですね。
ネーミング考えたイサリビの堀田くん。
その通り!!さすが!!!!
越田さん、ご来店いただいて、本当にありがとうございました!!
のん兵衛と伺いましたので、次は、お酒も飲んでってください。
お待ちしてます♪
あ、鯖と燗酒、最高のコンビネーションです。
焼酎のお湯割りも、捨てがたい。
下戸の私は、お米でいただくのが、最高です。