この10年を振り返ってみる 第6回
たかが10年。されど10年…。
2007年にミュージカルデビューしてからの、この10年を振り返ってみようという、エッセイ的な読みものです。(全10回。毎日18時更新予定)
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第6回
オーディションて、そんなに受かるもんじゃありません。
いや、人によってはスゴイ打率の方もいると思いますよ。
舞台は夢の世界ですが、そこに立てなければ無職の人。シビアな現実です。
課題曲の譜面が送られて来て、作品の資料を集め、音取りをして、歌を練習して、覚えて、いざオーディションに臨んでも、ダンス審査で落ちて、歌わず仕舞いなんてこともざら。
策を労しても「キャラが違う」ということで落選することもざら。
敗北が続くと落ち込みます。
それは自分の存在理由にも関わってくる事柄です。
辞めようか?続けようか?
しかし、漫然と落ち込んでると、その次に訪れるかもしれないチャンスは掴めない。1番投げ出したいときに、1番投げ出さない勇気。それは簡単なことじゃありません。
だから長年やっていらっしゃる大先輩とご一緒させていただく時は、勇気をもらいます。
間違いなく、数えきれないほどの自問自答や、自分との勝ち負けを乗り越えて、そこに立っていらっしゃるのだから。
擦り切れんばかりの心の回転運動みたいなものは、芸術にとって必要不可欠だと思います。
舞台も、音楽も、絵画も、文学も、受け手に何かを感じさせるのは、果てしない問いかけの過程に生まれた答えめいたものだと思います。
これはバンド時代には気づけなかったことでした。
さてさて
2016〜17年の「サイゴン」に合格した時は嬉しかった。
ラッキーパンチ的に入ることができた08年と違って、やっとこの世界に根を下ろせたのかな、なんて思います。
今回の「サイゴン」もそれはそれはハードでしたが、8つ歳をとっていたにも関わらず、大きな怪我もなく完走できたのは、8年間の鍛錬と、いろんな現場で出会ってきた仲間たちのおかげです。
いろいろ含めて、ちゃんと積み重ねて来たんだなと実感できた瞬間でした。
つづく
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