この10年を振り返ってみる 第5回
たかが10年。されど10年…。
2007年にミュージカルデビューしてからの、この10年を振り返ってみようという、エッセイ的な読みものです。(全10回。毎日18時更新)
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第5回
初めてのセリフは、2010年ミュージカル「タイムフライズ」で、
「(ヘルメットを)消防署からパクってきたのかー?」
みたいなやつでした。
新作の当て書きで、計3ヶ所ぐらいのセリフ量。正直ちょっと物足りない。
「麻田キョウヤはロックの人」
だからこそいただいた役なんですが、それは今後舞台を続けて行く上で、書き換えて行かなきゃならないレッテルだなと思いました。
「僕はもっとできるんです!」と、いくら声高に主張したところで、なんにも変わらない。時間はかかるけれど、いろんな実戦の中で証明しなければならない。
バンド時代に失敗した理由のひとつは、近くにいる人たちを納得させられなかったことでした。
同じ轍は踏むまい。
ひとつの機会をくれたのは、2011年、奥山寛くん演出のミュージカル「蜘蛛女のキス」革命家バレンティン役でした。
南米の某国の刑務所で出会った、ゲイの囚人モリーナと、革命家バレンティンの物語。甘くて危険な世界観と、独特の音楽が魅力的な作品です。
このころ僕は突発性感音難聴になってしまって、左耳がちゃんと聞こえませんでした。
左耳だけ低音域が聞こえなくて、ピッチが低く感じる。ひどい耳鳴りと、立っていられないほどの目眩。
もしかしたらこれが最後の舞台になるかもしれないという恐怖感の中、幸運にも最後までやり遂げることができました。
2幕、大曲「Day after that」を歌いきった後の、お客様の拍手を今も覚えています。
また、ご観劇いただいた、岡幸二郎さんに芝居を褒めていただいて、めちゃめちゃ嬉しかったですね。
僕の中でとても大きな収穫があった経験でしたが、とはいえそれぐらいでジャンプアップできるわけじゃない。欲張らずひとつひとつ。
ちなみに耳は、治療開始が遅れたため、かなり手こずりましたが、半年ぐらいかけて治しました。
つづく
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