この10年を振り返ってみる 第3回
たかが10年。されど10年…。
2007年にミュージカルデビューしてからの、この10年を振り返ってみようという、エッセイ的な読みものです。(全10回。毎日18時更新予定)
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第3回
2007年の「レ・ミゼラブル」。
やっているうちに、次第に評判が上がって来ました。
そもそもが名作中の名作です。
カンパニーは作品に育てられ、またお客様に育てられ、どんどん衣装や、音楽や、その世界感がしっくりと馴染んでいきました。
僕にとって初めての作品が、ロングランだったことはラッキーだったと思います。ど素人は、毎回全力でトライ&エラーを繰り返しました。
迎えた帝劇千秋楽。
開演前、もうこの景色は最後だから、心に焼き付けようと舞台のあらゆる場所を一生懸命に見つめました。感謝を込めて。
カーテンコールはグッときちゃいました(笑)
今思えば、相当張り詰めて毎日を過ごしてたんでしょうね。一切の妥協を許さず、120%でとにかく区切りまで到達できたことに安心したんだと思います。
みんなでやり遂げた!っていう、それまで経験したことのなかった感動が込み上げてきました…まだ博多公演があるというのに(笑)
そして無事博多座の大千秋楽を終えた後は、見事なレミゼロス状態となりました。
大げさでなく、舞台に立つ人の多くは、人生をかけています。全身全霊で役割に臨むことはもちろん、いくつかの犠牲を払ってそこに立つんです。
どんなに誠実に向き合ってきても、千秋楽の翌日には別の演目の看板がかかり、別の作品のファンの方たちで賑わいます。
毎日通って、慣れ親しんだ街も、劇場も、まるで他人のような顔になるんです。
移り変わりが激しいこの時代、それは当たり前のことなんですが、受け入れることに慣れるのにはもう少し経験を必要としました。
つづく
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