ジュリエットへの手紙/田原俊彦(1981年)【8月に聴きたいボーイズ歌謡 3選 ②】 | ミュージックロボットAOIの原色★歌謡曲図鑑

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一流ショコラティエ・宮下智のスイートバラードで、

81年夏、トシちゃんの「王子様」感はピークへ!

「全ての男性アイドルは、王子様か不良かに大別できる。」

 

2021年3月に「ニッポン男性アイドル史」(青弓社)を出版した社会学者の太田省一氏は、そう分析している。

 

GSから光GENJIまで、男性アイドルは、憧れをかき立てる優しい「王子様」タイプと、野性味あふれる「不良」タイプの対抗関係で展開。90年代に、どちらでもない「普通」という第三のタイプを確立させたのがSMAP。・・・という太田氏の分析は、なかなか的確だ。

 

そんな昭和歌謡における「王子様」アイドルの象徴は、やはり郷ひろみと田原俊彦だろう。

 

郷は、73年のシングル「裸のビーナス」の、ギリシャ神話のような銀色の布一枚の半裸姿のジャケ写のインパクトで、「王子様」路線を確立。

田原は、80年のシングル「ハッとしてGOOD!」で、「僕は今、爽やかな君だけのプリンスになると決めたのさ」と歌い、堂々「王子様」宣言している。

 

「君を渚で想えば Oh ジュリエット」

 

さらに、田原の「王子様」感を決定づけた楽曲は、81年夏のアルバム「No.3.Shine Toshi」収録の「ジュリエットへの手紙」だった。

 

羽田健太郎の印象的なピアノのアルペジオで始まるこの曲は、海辺のテラスで、恋人とケンカ別れした男の子が感傷するスイートバラード。

 

ジューリエーッ~♪という母音で引っ張るサビのロングトーンが難易度高く、田原の歌唱力は、やや追いついていない(笑)。が、迷わずロミオになり切り歌う田原の声からは、えも知らぬ甘さが醸し出ており、さすが!だ。

この曲のファン人気は高く、当時の「明星」歌本では、アルバム曲にもかかわらず、楽譜付でカラー掲載。84年には、この曲から発展したアルバム「ジュリエットからの手紙」もリリースされた。

 

作詞・作曲は、「ハッとしてGOOD!」も手がけた宮下智。

79年に作曲家デビュー。87年に引退。その後、アメリカに移住し、ショコラティエに転身。

現在は、東京・自由が丘で、ワイントリュフ専門店を営む、というユニークな経歴の持ち主だ。

 

彼女は、田原に「NINJIN娘」他、初期シングル8曲を提供。

いずれも「王子様」感満載の華やかな楽曲ばかり。

 

王子様・トシちゃんの人気は、一流ショコラティエの手による、トリュフのように甘~く良質な楽曲群に支えられていたのだ。

 

「ジュリエットからの手紙」

  作詞・作曲:宮下智

  編曲:羽田健太郎