ドリンク剤というと、疲れてしょうがない時や気合を入れたい時に、ガ
ツンと飲んで、ガーといくものというイメージがあった。
というか、事実、私はそういう利用をしている。が、ここで紹介されて
いるドリンク剤はこのイメージとはずいぶん違う。
・ゼリア新薬の「エナジカン」は、なんとアルミ缶でできている。アウ
トドアでの肉体疲労時に栄養補給するためだそうだ。
・武田薬品の「アリナミンR」は、カフェイン抜きで、ラベンダーとグ
レープフルーツの香りだそう。就寝前の服用を想定しているそうだ。
・大正製薬の「リポビタンファイン」は、なんと低カロリー。ドリンク
剤に低カロリーとは、カップヌードルライトなみの驚きである。
・エスエス製薬の「エスタック滋養液Wプラス」は、風邪を引いた時の
栄養補給。これはこういう使い方をしていたので、とても合点がいく。
こう見ていくと、栄養補給という一次機能から、アルミ缶、カフェイン
抜き、低カロリーと、二次機能に争点が移っていると言える。
なぜなのだろう?
ひとつには機能性飲料との競合がある。アミノ酸やウコンを配合した機
能性飲料との垣根が低くなってきて、ここに競争が起きている。いわゆ
るポーターのファイブフォースにおける代替品の脅威である。
ドリンク剤というカテゴリーが機能性飲料の登場で、侵食されたのだろ
う。ゆえにこれをキャッチアップするために、ドリンク剤が機能性飲料
の体裁を帯びてきているという訳だ。
もうひとつは規制緩和がある。1999年医薬部外品ならコンビニエンスス
トアに置けるようになった。こちらはドリンク剤からの機能性飲料への
侵食だが、これもドリンク剤の機能性飲料化に影響した。
そしてこれにより、チャネル側(コンビニ側)からプレッシャーを受ける
こととなる。
コンビニは店頭を活性化させるため、頻繁に新製品を出すことを要求す
る。これにより、製薬会社は新製品を出さなければならないが、一次機
能においての差別化は難しい。
ゆえに差別化を二次機能に求めてしまうのだろう。
とはいえ、これがいい結果となって、ドリンク剤市場は1516億円市場、
前年比100.6%だそうだ。確かに微増だが、このご時世では奮闘している
と言えよう。これは上記のような背景があればこそのことだと思う。
■ポイント
ドリンク剤の二次機能競争は、隣接する機能性飲料の影響とコンビニか
らの要請が促進している。新たな競争軸に移る時には、明確な理由があ
るということが分かる。
■見えないもの
ドリンク剤の二次機能競争激化の理由
■参考書籍
「現代マーケティング(有斐閣)嶋口充輝・石井淳蔵著」
(資料出所 2009年3月18日(水)産業9面)
初出はメルマガ「日経産業新聞から読み・説くビジネスシーズ、改め、村山涼一の「見えないものから考える」
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