デジタルメモというカテゴリーはできるのか? | 村山涼一のマーケティング備忘録

村山涼一のマーケティング備忘録

日々のマーケティングについて得た知識、考えたことの備忘録

この商品の要点をまずまとめてみる。


・メモ用途限定
・ネット接続、メールはできない
・文庫本サイズ
・折りたたみ式キーボードと4インチの液晶画面。重量370g
・キーボードはノートPCと同じサイズ
・データはUSB接続でPCなどに転送できる
・価格は実売で2万円を切る(筆者調べ)


もちろんここで書いたことは全てノートPCでもできる。ノートPCより優
れているのは、小さいということと価格ぐらいしかない。


さてこの商品はヒットするのだろうか?


実際、発売4か月で3万台、初年度10万台は行くだろうと予想されている。
これはまさしくヒット商品である。


ではヒット要因は何なのだろう?また発売元のキングダムは「デジタル
メモ」という売り場を作りたいと言っている。言い換えれば、これをカ
テゴリー化したいということであるが、これは果たして可能なのだろう
か?


まず考えていくための与件として、開発動機をまとめてみる。


着眼点は、「ノートPCを持つのがわずらわしい」「手書きメモだと打ち
直すのが面倒」ということであり、ここから「持ちやすい電子メモ帳が
作れないか」と思ったそうだ。


そして、「小さくて、キーボードがしっかりしていて、データ化できる
メモ帳」というコンセプトが生まれた。


次にターゲットが書かれている。ターゲットは男性会社員30代から50代
だそうだ。


コンセプトとターゲットから考えると、現場で仕事をしている人たちに
十分なベネフィットがあって評価されているように思える。


例えば、社費で講演を聴きにいき、その報告書を出さなければならない
人。また書類や企画書を作る時に、その骨組みだけを粗打ちしたい人。
これをベースにノートPCやPCで完成させるのだろう。また会議などで備
忘録を作りたい人。ただし、それを書類や報告書、企画書にしなければ
ならない人だと思う。


こう考えてみると、この商品は、


メモ<デジタルメモ<ノートPC


という位置づけとなり、メモとも、ノートPCともカ二バリゼーションを
起こさない。メモはさらにデータ化しなければいけないということで、
デジタルメモとは異なる。またノートPCは、メモを取る場合には不必要
なものが多すぎる。ゆえにこことも異なる。つまり、新価値を持ってい
ると言える。


またよく似た商品としてネットブックがある。こちらもノートPCでカ
バーできるが、小ささと価格が売りとなって、ネット接続とメール用と
いうことで新価値とカテゴリーを作った。


ここから類推すれば、データ化できるメモ帳ということで、新価値とカ
テゴリーが作れるように思う。


■ポイント
ここで採られている戦略をカテゴリー構築戦略といい、構築するカテゴ
リーを使用していない人々、もしくは企業が考えているのとは違う目的
のためにそのカテゴリーを使用している人々をターゲットとする。この
商品は、こういうターゲットに向けて、機能特化と小型化、低価格で新
価値を提供したのである。


■見えないもの
カテゴリーはどういう時にできるのか


■解決の参考となる文献
「マーケティング戦略論(ダイヤモンド社)ドーン・イアコブッチ編著」


(資料出所 3月16日(月)産業13面)


初出はメルマガ「日経産業新聞から読み・説くビジネスシーズ、改め、村山涼一の「見えないものから考える

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